「現代を生かす新渡戸稲造と妻メアリーの精神(こころ)――教育と平和」と題して、東京女子大学(http://www.twcu.ac.jp/)前学長・湊晶子先生のご講演でした。湊先生は、秋山財団の一つの事業「新渡戸・南原賞:http://www.akiyama-foundation.org/nitobe/」で、その運営委員会メンバーのお一人です。この賞を秋山財団が受け継いだ経緯は一昨年のこの欄に掲載しています(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=35)。
前日の夜は、お忙しい中お時間をとって頂き、夕食をご一緒にする機会もあり、じっくりお話を伺うことができて光栄でした。昨日のご講演も含めて、体が感動で震えるとでも言うのでしょうか、素晴らしいメッセージの数々でした。
新渡戸稲造はご承知の通り、初代の東京女子大学・学長、湊晶子先生は、新渡戸稲造の妻メアリーの研究でも有名な方です。札幌ANAホテル玄関横に、1891年1月1日にアメリカで結婚されてすぐに帰国、札幌農学校教授となった時の官舎跡碑があります。写真の2階窓から姿を見せているのがメアリー夫人です。別件ですが、この年に秋山愛生舘が地元企業として創業しています。恐らく札幌の街中のどこかで、新渡戸稲造・メアリーと初代秋山康之進が出会っていたかも知れません。
1894年に遠友夜学校(http://www.city.sapporo.jp/kyoiku/youth/enyuyagakko/index.html)を創立し、初代校長に稲造が、没後妻メアリーが就任しました。
湊先生は、第13代の学長、卒業生では初めてで、女性では安井てつ先生に次いで2番目です。新渡戸稲造とメアリーの教育者としての足跡、特に女子教育への造詣、平和主義者としてのメッセージを語られました。著書では、『新渡戸稲造と妻メリー』、『女性を生きる』ほか多数あります。以下昨日のお話からいくつかを。
* 稲造はジャンヌ・ダルクが好きだった?――大学に所蔵されている資料のかなりの部分は彼女に関わるもの
* 二人が実践した「リベラル・アーツ教育」は、いわゆる「一般教養」などではなく、「自信」と「喜び」を通して得られる「生きる力」そのものである
* 知識として教えられることをすべて忘れた後に残っているものが教養である
* 人はどこか動じないところ、譲れぬという断固とした信念がなければならない
* 「太平洋の橋」として、『武士道』を英語で出版した。副題は「Sole o Japan:日本の心」、「武士の心得」を書いたものではない
湊先生は、最後に「二人から現代へのメッセージ」とおっしゃって、講演を結ばれました
1) 一人称で語れるわたしに ―― To know, to do, to be :知ることよりも実行すること、実行することよりも私が私として存在することがまず大切で、価値がある
2) 責任を取り得る人物に ―― 「自分を治める」こと :Personality(人格)のないところにはResponsibility(責任)は生じない :別の表現では、「孤独に勝て」と
3) 平和をつくり出す人に ―― 「寛容の精神」、「私と公と公共」の理念を :当時は「滅私奉公」に象徴されるように「公=国家」だったが、本来は「公=個の集合体」であるはず、そして「つくり出す」のは、「参画する」ことから始まる
お札から姿は消えましたが、私たち北海道の人間の心の原点として、再度その「精神(こころ)」を見つめ直したいものです。ゆかりのある場所は、大切に保存し、札幌市民として一層誇り高い場所としていきたいですね。
湊晶子先生、貴重なお話の数々をありがとうございます、心から感謝申し上げます。
2 月 1st, 2011 at 3:11 PM
[...] 先日ごく内輪で、湊(内平)晶子先生の「瑞宝中綬章受章を祝う会」が大変和やかに、かつ格調高く開催されました。2年前から秋山財団でお引き受けしている「新渡戸・南原基金」事業の運営委員をされていて、昨年秋にも、札幌で講演をされました(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=5961)。当日の湊先生のご挨拶、「ビジョン、パッション、ミッション」はあらためて心に響きました。 ご挨拶する湊晶子先生 [...]
3 月 26th, 2013 at 10:18 PM
[...] http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=5961 [...]