優れた報道を勝手に褒めたたえて表彰するメディア・アンビシャス(http://media-am.org/)の、今年度の公開選考会が50名以上の参加者で開かれました。当日は映像系ノミネート作品4本を5時間かけて上映し、活字系ノミネート記事5つをそれぞれの会員が推薦講評、投票の結果、得票順に「メディア・アンビシャス大賞」、「メディア賞」、「アンビシャス賞」を決定し、それ以外のノミネート作品は「入賞」としました。
公開選考会の案内チラシ
<活字部門> *ノミネート5作品の中から1作品を選んで投票
メディア・アンビシャス大賞: 「いのち 自死3万人の時代に」(北海道新聞)
メディア賞: 「追跡・累犯」(毎日新聞)
アンビシャス賞: 「ヤマトよ偽善だ/沖縄は怒り疲れ虚脱」(朝日新聞)
入賞: 「フリーター労組が国賠訴訟」(北海道新聞)
入賞: 「現代かわら版 ウラン渇望 ソ連の原爆開発と日本」(北海道新聞)
大賞には、「自殺」をテーマにした連載作品が選ばれました。この作品は第1部から第4部までの隔月の長いシリーズで、「自殺をどう減らすか」を目的に企画され、残された遺族、医師、電話相談員等の思いや、うつ病の現実、保護活動の動きなど多様な視点を伝えています。テーマ的には不幸にも新しいものではないのですが、「統計数値の外で消えるいのち」、「数値の奥に続く多くの苦悩」ほか、日本社会の病理に正面から向き合った内容が評価されました。
メディア賞には、犯罪と福祉のはざまに陥って再犯を繰り返す「累犯」を長期間のシリーズで追跡した作品が選ばれました。福祉からこぼれ落ちてきた知的障害者、高齢者が多いことに注目するなど、その視点の新しさが称賛されました。
アンビシャス賞には、基地問題をめぐる沖縄の現場と日本メディアの偽善を伝えた作品が選ばれました。「政治のせいだけにはできない、メディアの責任も大きい」として、大手メディアが自らメディア批判に切り込んで、「記者魂」を感じたとの高い評価があり、ぜひこれからもこの姿勢を続けてほしいという期待を込めた受賞となりました。
<放送部門> *4作品鑑賞者は上位作品から順に4点/3点/2点/1点を付け、
3作品鑑賞者は同様に3点/2点/1点、
2作品鑑賞者は同様に2点/1点、
1作品鑑賞者でその作品に投票したい場合は1点を付け、
その得点を合計する方法で行いました。
メディア・アンビシャス大賞: 「あるダムの履歴書~北海道・沙流川地域の記録~」(NHK制作)
メディア賞: 「雨はすべてを洗い流す 在宅死に向き合う三家族の絶望と再生の記録」(UHB制作)
アンビシャス賞: 「NICU その先の現実~医療と福祉のはざまで~」(STV制作)
入賞: 「英霊か犬死か~沖縄から問う靖国裁判~」(琉球朝日放送制作)
大賞には、「違法ダム」として残り続ける二風谷ダムの歴史とアイヌの人々の思いを描いた作品が選ばれました。圧倒的な長期間取材に基づく説得力が支持されての受賞となりました。
メディア賞には、在宅死を選択した家族模様を描いた作品が選ばれました。従来のドキュメンタリーにはなかった表現方法や、日常の中にある「死」を描いている点などが評価されました。林先生の言葉、「その人の人生を知らなければ本当の治療は出来ない」は、看取りの真髄なのでしょうね。
アンビシャス賞には、NICUを出た後に障害児に対する十分な支援や受け入れ機関がないまま、苦しい生活を強いられる家族を描いた作品が選ばれました。現実を報告するだけでなく、「現状改善のためにどうすべきか」を提案している点が支持されました。また被写体との距離も的確で、改めてメディアスタッフの信頼感、コミュニケーションの大切さも教えられた作品でした。
これ以外の入賞作品も大変素晴らしい内容で、4作品とも非常に僅差でした。
制作者の方もお招きした授賞式を、2月7日(月)夜・シアターキノ(http://theaterkino.net/)で行う予定です。詳しい制作の背景や会員の評価などもさらに聞けると思います。私も世話人の一人として、この機会に一つの作品・記事を何回も観たり読んだりしました。最初より2回目、3回目にさらに新しい気づきが有る場合も多く、メディアの力を感じます、奥が深いものですね。