アフガンを語る、中村哲先生

Posted By 秋山孝二
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  やっと実現しました、ペシャワール会(http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/)中村哲先生との出会いです。昨年、札幌で中村先生の講演企画がありましたが、急な用件で現地を離れることができず、別の方の講演となりましたので。今回は500人の聴衆で会場はいっぱいになり、覚悟を決めて取り組まれる現場からの2時間を越えるメッセージは、心にしみるお話でした。

講演会チラシ

講演会チラシ

  以下、印象に残る幾つかの言葉を書き留めます。

* 国・民族による固有の文化は多様で、「違い」は確かにあっても単なる「違い」であって、決して「進んでいる・遅れている」、「良い・悪い」、「新しい・古い」ではない
* アフガン難民の発端は「政治難民」ではなく、土地の砂漠化に起因するもので、緑地が復活すればまた戻ってくる構図、この出発点を間違ってはいけない

* 現地での日本人への感情は大変良い、理由は1)日露戦争でロシアに負けなかった(当時は日本、アフガン、タイ以外はほとんど植民地状態だったから)、2)ヒロシマ、ナガサキに象徴される廃墟から立ち直り平和国家として活動を継続している姿、自分には「大いなる美しい誤解」だと思われるけれど・・・

* 日本及び世界のメディアの誤り:「ピンポイント攻撃」ではなく「無差別爆撃」、地元民にとって外国軍が最も危険な存在

* 外国軍がもたらした「自由」とは、1)ケシ栽培の自由、2)売春の自由、3)餓死する自由

* 「女性の地位」に対して:何を持って「地位が高い、低い」とするかがまず問題。確かに男にのみ与えられた教育の現状、しかしその「男社会」をしっかり支えているのが女性である。母は「それでも男か!」と息子を叱り、女性の支持なしには仕事は出来ない。ペシャワール会の灌漑工事が圧倒的な住民の支持を得たのは、女性に課せられた過重な水汲み労働からの解放をもたらしたからである。

* 現地の常識として、農民=兵士であり、「農民を集める」ことは「一揆を起こす」ことに近いメッセージを与える、そんな中で600名の住民が集まっての灌漑工事と理解すべき、危機感はいつも持っている

* 活動によって「緑地の復活=食べることができる」状態の獲得、これが一番の「防衛」ではないか!

 

500人の聴衆で大盛況
500人の聴衆で大盛況:質疑応答で

 講演後に沢山の質問が出ましたが、一つ一つに本当に丁寧に、真摯にお答えになるお姿を拝見して、中村哲先生のお人柄を感じました。恐らく現地の方々への接し方も、そんなスタイルなのでしょうね。「今、現地で働く日本人スタッフは何人ですか?」という質問に対して、「今は、ゼロです。一昨年8月の伊藤和也さんの事件以来、ある意味で無防備な若者の命を守る体制が自分には難しいので、私一人で今は活動しています」とのご返答でした。一瞬会場が静まり返りましたが、覚悟を決めて26年間活動されている人間の姿を、私は先生のお言葉から強く感じとりました。

 会場では割れんばかりの拍手が鳴り止みませんでした。

2 Responses to “アフガンを語る、中村哲先生”

  1. 秋山孝二の部屋 » Blog Archive » 動画サイト「日本の魅力:My Japan」ほか Says:

    [...]  先日の永く商社マンで現地の方々と仕事をした経験でも、どうも日本の援助は、「教えてやる」、「授ける」と言った臭いが無くならず、「何様だと思っているのか!」と批判が多いようです。ペシャワール会中村医師(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=4289)のように「共に汗を流す」とか、「共に創る」というパートナーシップが欠如しているのでしょうね。地元住民の目線からの支援になり得ていない、本物ではない実体、多額の支援をしておきながら、「官」による、すなわち「税金」による海外援助は実にモッタイナイ現状です。民間に同じ金額を委託されれば、恐らく10倍くらいの効果を上げることは出来るでしょう。 [...]

  2. 秋山孝二の部屋 » Blog Archive » ドキュメンタリー「花と兵隊」 Says:

    [...]  アフタートークでは、松林監督の1年間のアジア放浪の旅、アフガンでペシャワール会・中村哲(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=4289)先生との出会い、そして中村先生の伯父(母の兄)である火野葦平(http://hinoashihei.com/)との脈絡によって、この映画製作に至る過程等、周辺の興味深いお話も聴くことができました。火野葦平の作品「花と龍」は、数社で映画・テレビドラマ化されていますし、今回のこの映画タイトルは、彼の戦前の作品「花と兵隊」に由来するそうです、「北九州つながり」とでも言うのでしょうか。 [...]