「無言館への旅」を語る

Posted by 秋山孝二
Categorized Under: 日記
Comments: 0

  戦没画学生慰霊美術館「無言館(http://www.kidailack.co.jp/gallery/mugon.html)」館主・窪島誠一郎さんの講演会が開催されました。彼はこの美術館オープン(1997年)に先立って、 信濃デッサン館(http://www.kidailack.co.jp/gallery/shinano.html)を31年前に開設しています。

窪島誠一郎の講演

窪島誠一郎さんの講演

  書籍「無言館はなぜつくられたのか:http://www.bk1.jp/product/03279120」(かもがわ出版)」にも詳細は記述されていますが、野見山暁治先生との出会いから、多くの画学生の遺作収集、遺族を訪ねる全国行脚等、絞り出すようなお話に200名を越える参加者も聴き入っていました。

 美術館に足を運ぶ目的は、ただ有名な、お目当ての作品を見に行くのではなく、「作品と出会う『未知なる自分』の発見=非日常」を楽しむこととおっしゃっていました。実によくわかります。

 野見山先生と窪島さんは、87か所の学徒出陣した先生の同級生を訪問されました。先生にとってはかなり辛い旅だったはず、と窪島さんは同行されての感想も語っていました。そして窪島さんは、それぞれの遺作自体はまだまだ発展途上かもしれないが、自分が感動した想い出を他者に伝える義務があるのではないだろうか、自分のいのちは伝える為にある、そんな気持でいっぱいとのことでした。

 終わりに、この「無言館」にある作品は、反戦平和のプロパガンダではなく、愛する人を描いた数々であり、愛する人への感謝を通じた自分のいのちの証でもある、同時に今を生きる我々はどれだけのものを失ってきたのかを問いかける場に違いない、そう結ばれました。

 野見山暁治先生から「君は戦争を知らないだろう」と言われた窪島さんですが、彼自身は、「養父母のシルエットの向こうから自分も戦争を体験している」と話されていました。戦争の影を引きずるお二人の出会い、そこから戦争と戦没者への深い想いが無言館を通して浮かび上がってくるのでしょうね。

 急な企画と主催者の國田さん(中学・高校の一年後輩)はおっしゃっていましたが、奥行きの深い素晴らしい講演会でした。