メディア・アンビシャス7月例会(http://media-am.org/?p=203)では、STV(http://www.stv.ne.jp/)・佐々木律プロデューサーをゲストにお迎えして、作品「がん患者~お金との闘い:http://www.stv.ne.jp/tv/dnews/past/index.html?idno=20100528204534&query_start=1」を上映・ディスカッションを行いました。(参考:http://pancreatic.cocolog-nifty.com/oncle/2010/02/post-c4a4.html)
今年1月に、がん患者の女性・金子明美さんが享年41歳で亡くなられました。彼女はがんと闘いながら、がん患者の治療費負担の問題を提起してきました(金子明美さんブログ:http://plaza.rakuten.co.jp/akiramenaidesu/)。
私はがんに関しては、これまで医薬品卸売会社の経営者として、現在は北海道対がん協会(http://www.hokkaido-taigan.jp/)・監事として、それなりに近い立ち位置で過ごしてきましたが、今回のような患者サイドの経済的な視点からの問題提起は、恥ずかしながら初めて接しました。
この番組は3回目のリメイク、3年間の取材中にSTV「どさんこワイド」でニュースとして20回以上報道され、岩波書店からも「がん患者~お金との闘い:http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-022499-4」で出版されています。佐々木さんもお話されていましたが、一連の取材では、患者・家族の周りには多様な課題が横たわっていて、「何をテーマとするか」、「どこに解決の道筋があるのか」等、誰も見つけられない難しさがあったようです。創りようによっては、「がんを支える家族物語」で終わってしまう、そんな危惧さえお持ちだったとか。厚生労働者の窓口の方も、新聞レベルの現状把握でしかなく、一般市民にとっては推して知るべしですね。生命保険会社に対しては、「知らせる」意味あいでは大きな成果があったのかもしれません。
製薬会社は、競ってこの分野で新薬開発を莫大な投資により行い、市場に出たとしても大変高価な医薬品となります。その上、「治療」というよりも「延命」効果に止まる訳で、研究領域を越えた幅広い医師・医療機関、患者・その家族にとって本当に望む医療なのかどうか、まだまだ議論の余地がありそうな気がします。ただ、患者サイドに立った報道というのは大変貴重であり、是非これからもこの視点からのメディアの役割に期待し続けたい気持です。
もう一つ、医療関係の話題です。「札幌医科大学・医療安全公開講座:『女子医大の経験』~再発を防ぐために(http://web.sapmed.ac.jp/jp/public/local/index.html)」が開催されました。黒澤博身先生による2001年3月の東京女子医大(http://www.twmu.ac.jp/)事件から学ぶ貴重なお話でした。英国「ブリストルの経験:http://dr-urashima.jp/pdf/r-5.pdf」から、「システムエラー」の中で、コミュニケーションの重要性を指摘され、「現代医療の限界」を、事前にどう患者・家族に説明するか、医療従事者の認識とギャップのある課題を提起されました。そして同時に、ここでもメディアの役割の重要性が語られました。
超高齢社会、疾病構造の変化、医療の進歩、新薬の発売等、日本では我々にとって未知の課題解決までの間に、まだまだ幾つかの貴重な「いのち」の存在が必要なのかも知れません。どこかに「悪者がいる」といった悪代官探しよりも、みんなで創っていく姿勢が急務なのだと思います、それが亡くなっていった「いのち」に対する責任かと。