地域ヘルスリフォームを考える@静岡

Posted by 秋山孝二
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 静岡県立大学大学院附属医療経営研究センター:代表 西田在賢教授(http://cmhw.u-shizuoka-ken.ac.jp/chms/)が、「ひるがえってわが国の地域ヘルスリフォームを考える」と題した静岡県立大学創立30周年記念政策研究会を、 谷田キャンパスの大講堂で開催しました。私は「一般財団法人 社会福祉・医療事業の経営研究会」の理事として参加しました。

 西田在賢先生とご一緒のこれまでの記事はこちらです:

* http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=18261

* http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=24823

静岡県立大学谷田キャンパス

静岡県立大学谷田キャンパス

<プログラム> ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

13:15-15:15 第一部(進行:東野定律 医療経営研究センター副センタ―長、大学院経営情報イノベーション研究科准教授)
13:15-14:00 【講演】「英国の病院トラストに見る地域病院の統括管理」
西田在賢 医療経営研究センター長、大学院経営情報イノベーション研究科教授
14:00-14:45 【講演】「英国の医療提供とアカウンタビリティ」
Uddin, Shahzad教授(英国Essex大学Business School, Accounting Centre Director)
(通訳:森 勇治 医療経営研究センター副センタ―長、大学院経営情報イノベーション研究科准教授)
14:45-15:15 【講演】「わが国の非営利ホールディングカンパニー医療法人の議論を振り返る」
橋本英樹(東京大学大学院医学系研究科教授、公共健康医学専攻保健社会行動学分野)

15:30-16:30 第二部(進行:遠藤邦夫 矢野経済研究所首席研究員)
【討論】「はたして日本で病院トラストができるか」
・宮島俊彦氏(内閣官房社会保障改革担当室長、元厚生労働省老健局長)当センターセンター顧問
・角田愛次郎氏(弁護士、㈶社会福祉・医療事業の経営研究会理事長、㈶国際ビジネスコミュニケーション協会監事、
静岡県立大学医療経営研究センターガバナンス会議議長)
・Uddin, Shahzad(Essex大学教授)
・橋本英樹(東京大学大学院教授)
・西田在賢(静岡県立大学教授) ほか

16:30  閉会の辞

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 研究会では、前半にセンター長の西田在賢教授が、今年6月から8月にかけて「社会保険旬報」に連載した『英国病院トラスト考』について概説し、続いて英国からお招きしたウディン教授(エセックス大学ビジネススクールの研究センターAccounting Centre責任者)から、同国の医療サービス提供において求められるアカウンタビリティ、及び地域病院群を統括管理する病院トラストではどのようにしてアカウンタビリティを果たすかを解説されました。いわゆる米国的「会計」とはかなり異なった「アカウンタビリティ」の深い意味合いを理解する機会となりました。

西田在賢教授

西田在賢教授

Uddin, Shahzad(Essex大学)教授

Uddin, Shahzad(Essex大学)教授

 さらに昨年、厚生労働省が公表した地域の医療・福祉施設を統合管理できるとする「地域医療連携推進法人制度(仮称)」の検討委員会の委員をされた東京大学大学院医学系研究科の橋本英樹教授から、日本における病院経営統合の課題等についてご説明・ご意見、そのあと、ファシリテーターを矢野経済研究所首席研究員の遠藤邦夫氏に、厚生労働省や関連分野の有識者の方々を交えたパネルディスカッションが行われました。

後半はパネルディスカッション

後半はパネルディスカッション

パネリストの熱弁が続きました

パネリストの熱弁が続きました

 終了後は、関係の皆さまとで意見交換会。それぞれの方々のこの分野の関わりを知り、個別の会話を通じてさらに理解が深まりました。

浮月楼の庭を観ながら

浮月楼の庭を観ながら

 企画のご案内に、「わが国では人口が縮減する中で高齢化が本格化しており、国の借金と医療介護費用が膨れ上がるのを目の当りにしながらも未だに国のグランドデザインは見えず、まるで沈みゆくタイタニック号のデッキの上でイスの並べ替えを行っているようなもどかしさがあります」と書かれていますが、私も全く同様の現状認識です。リフォームが急務な現状への危機感がないのですね。

 英国はちょうど40年前の1976年に、社会保障負担の重なりも原因となって国の財政が行き詰まりIMF管理に陥りました。その後さまざまな社会改革を重ねて昨今の財政回復に至りますが、この間の改革の研究と努力は「ニュー・パブリック・マネジメントNPM」と総称されますが、医療分野のNPMでは、英国の「ナショナル・ヘルスサービスNHS」によるさまざまな改革、なかでも医療圏ごとに地域の病院群を再編・ネットワーク化する「病院トラスト」の仕組みや運営には学べることが多くあるとの西田先生のご指摘です。

 今話題のわが国のヘルスリフォームすなわち医療改革の重要課題の一つである「地域医療構想」、そしてこの政策に整合することを求められる新公立病院改革は、いずれもが地域の基幹となる公的病院群の相互理解と連帯を求めることになると見られますが、そのような連帯を促すためのロジックがわが国には見当たりません、実現する装置・システムの欠落です。地域の未来像に対する経営責任者の欠如とも言えましょうか、「地域医療構想」の最大の弱点だと思います。

 医療は地産地消、「アカウンタビリティ」は地域住民に対する説明責任であり、見える形の運営責任でもあるとのまとめは説得力がありました。