山本義隆、変わらぬ深い洞察!

Posted by 秋山孝二
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 昨年の3・11以降、出会った最も印象的な書物に、山本義隆著「福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと:http://www.msz.co.jp/news/topics/07644.htmlがあります。わずか100ページ程ですが、ご存知の方は忘れられない名・山本義隆http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=8821)、この変革期に変わらぬ深い洞察です。

 その中から幾つかのフレーズ~~~~~~~~~

* 20世紀に大きな問題になった公害の多くは、なんらかの有用物質の生産過程に付随して生じる有害物質を、無知からか、あるいは知っての上での怠慢からか、それとも故意の犯行として、海中や大気中に放出することで発生した。ひとたび環境に放出された有害物質を回収するのは事実上不可能であるが、技術の向上と十分な配慮により廃液や排気を濾過し、そのような有害物質を工場外に出さないようにすることは不可能ではなく、またこうして発生源で回収されたそれらの有害物質を技術的に無害化することも、あるいはそのような技術が生み出されるまで保管しておくことも、多くの場合可能である。・・・・いずれにせよ有害物質を完全に回収し無害化し得る技術が伴ってはじめて、その技術は完成されたことになる。

* 無害化不可能な有毒物質を、稼働に伴って生み出し続ける原子力発電は、未熟な技術と言わざるを得ない。

* 定期検査では、放射能を有する気体も大気中に放出されている。このように原発は、それ自体が放射能と熱の二大汚染源である。その影響がすぐに明らかにならないからと言って、このまま原発を稼働し続け、何世代も後にどのような影響がもたらされるかを人体実験するわけにはいかない。つまることろ原子力発電は、日常的に地球環境を汚染し、危険で扱いの厄介な廃棄物を生み出し続け、その影響を受益者の世代から見て何世代、いや何十世代も先の人類に、負の遺産として押しつけているのである。

* 税金を用いた多額の交付金によって地方議会を切り崩し、地方自治体を財政的に原発に反対できない状態に追いやり、優遇されている電力会社は、他の企業では考えられないような潤沢な宣伝費用を投入することで大マスコミを抱き込み、頻繁に生じている小規模な事故や不具合の発覚を隠ぺいして安全宣伝を繰り返し、寄附講座という形でのボス教授の支配の続く大学研究室をまるごと買収し、こうして、地元マスコミや学界から批判者を排除し、翼賛体制を作り上げていったやり方は、「原発ファシズム」という様相を呈している。

* 経験主義的に始まった「水力」や「風力」、あるいは「火力」といった自然動力の使用と異なり、「原子力」と通称されている核力のエネルギーの技術的使用、すなわち核爆弾と原子炉は、純粋に物理学理論のみに基づいて生み出された。

* 今回東北地方を襲った大津波に対して、最も効果的な対抗手段が、ともかく高所に逃げろという先人の教えであったことは教訓的である。私たちは古来、人類が有していた自然に対する畏れの感覚を、もう一度取り戻すべきであろう。

* こうなった以上は、世界がフクシマの教訓を共有するべく、事故の経過と責任を包み隠さず明らかにし、その上で、率先して脱原発社会、脱原爆社会を宣言し、そのモデルを世界に示すべきであろう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~以上 引用おわり

 日本を代表する卓越した物理学研究者・山本義隆の見識でした。

 実を言うと、私の家の書棚には、8年前に第30回大佛次郎賞を受賞した彼の著書「磁力と重力の発見1・2・3:http://www.msz.co.jp/book/detail/08031.html」が置いてあるのです。三冊をすぐに買ったのですが、最初の100ページを読んで挫折して、そのまま今日に至っていました。今回の彼の原発事故への深い考察を目の当たりにして、再度「磁場と重力の発見」に挑戦しようと意欲が湧いてきました。

 山本義隆氏の変わらぬ見識に感動し、力を得ました。