この所のニュースのドタバタを見えていると、何かを語らねばという以前に、認識のお目出度さに恐ろしさを覚えるのは、私一人ではないでしょう。政治家の云々を言っている暇は私にはありませんが、来日したクリントン長官に関しては、どうしても認識を間違えないようにしなくては、との強い危惧を抱きます。
メディアでは盛んに「最初の訪問に日本を選んだ(?)」、「日本重視のあらわれ(?)」との見出しですが、とんでもないという感じですね。同時にオバマ政権内での「知日派」に対しても、お目出度く「親日派」との思い込みが強すぎます。その立場立場での発言を冷静に吟味して対応しなければ、まさに国民は大変な犠牲を強いられます。メディアも深読みして貰いたいと思いますね。
「クリントン長官がアジアを最初の訪問先にしたのは『消去法』の結果だったといえる。米国の外交全体のなかで、オバマ政権の他の大物たちが手がけたために国務長官自身が少なくとも当面、すぐには踏み込めないという地域やテーマを除外していくと、残された地域は北東アジアと中南米だけだった。だが中南米にはベネズエラのチャベス政権はじめ反米の政府や国民感情を抱く国もあり、米国務長官のデビューの歴訪の対象としてはリスクが高すぎる。その点、北東アジアはわりに米国に友好的な諸国が多く、残された唯一の候補地域となった。」、「ましてクリントン長官は就任後すぐ、このアジア歴訪の途につく前に、ワシントンで英国やフランス、ドイツの外相と、それぞれ個別に会談しているのだ。」との報道も目にします。「日本が最初」ではないのですよ。
先日、証券会社の国際金融のプロから個別にお話を聴く機会がありました。新しい時代の基軸通貨はどうなるのか、国際金融の中で米ドルの位置づけは今後どうなるか、円高はどういう展開になるかについて、興味深いお話の数々でした。その中で、今世紀における米国の通貨政策の主たる対象通貨は、日本円ではなく中国元ではないかとの観測は、特に興味を引くものでした。先日のガイトナー財務長官の中国政府の為替介入への牽制等も、そうした背景からくるものだったと理解すると、腑に落ちます。そして、更に衝撃的なのは、日本の位置づけが「アメリカのポチ」、すなわち交渉を必要とする相手ではなく、いつでも言う事をきかせられる相手であると。
オバマ政権は急激に膨らんだ軍事費を何とか削減しようとするでしょう。それが「軍縮」を意味するのなら国際社会も歓迎ですが、極東における場合、仮に基地等の削減ではなくコストを日本国に肩代わりさせる戦略だとすると、日本は国際紛争へ否応なしに引きづり込まれる事になります。1400兆円を越える財源をさほどの交渉もなく引きずり出させる、そんな泥沼だけは避けなければなりません。アメリカ国債を買っている国では、日本を抜いて中国が初めてトップになりましたが、二重三重の意味合いで、「ポチ」で良いはずはありません。国際金融の視点からも、防衛の視点からも、本来の自立する「パートナー」である事こそ、真の「国益」だと思います。
随分前ですが、確かアメリカの陸軍幹部候補学校のカリキュラムだったと思いますが、リーダーの向き・不向きという項目で、能力の高い・低いがX軸、やる気の高い・低いがY軸をイメージして、どのタイプが最もリーダーに向いているのか、という問いがありました。普通は最も適性のあるタイプは、能力が高くかつやる気も高い人と答えるのですが、実は現実はそれではないそうです。リーダーが能力・意欲ともに高いと、部下が馬鹿に見えるのと誰もついていけない場合が多いそうです。正解は能力が高くやる気の低い(低い素振り?)人だそうです。その次は意外なのですが、能力が低くかつやる気も低い人、この場合は部下がこのままではいけないとの思いで危機感を持ち、結構人材が輩出される場合が多いそうです。最悪は、能力が低いのにやる気のある人だそうです。判断の間違いが多く、蛮勇タイプでやりたがり、無理が多くて犠牲者が増えるそうです。言わんとする所は、結局はリーダーは能力が高くなければいけない、なのですが・・・。この所のアメリカ・ロシア首脳とのやり取りを見ながら、思い出しました。
国のリーダーを選ぶのは、疑いなく投票を行う国民です。ワイドショーでさんざんこき降ろして、「ハイ、次のニュースです」では済まされません。国の民度は、リーダーをみれば一目瞭然です。夜明け前の暗さの中で、暫くは国民は我慢でしょうか。