進む札幌と韓国との演劇交流~これからも楽しみ

Posted by 秋山孝二
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 私は、北海道演劇財団http://www.h-paf.ne.jp/の副理事長を務めています。昔、演劇に携わった訳でも何でもないのですが、東京で生活していたときから時々舞台を観に足を運んではいました。TPSはこの演劇財団のファンクラブで、毎月一回、「サロンの会」が催されて、役者とか演出家とか、その時々のゲストをお招きして交流を深めています。舞台で見る姿とはまた別の側面を垣間見て、芝居の楽しみは倍加します。

数年前から、この演劇財団活動は海外との交流が活発になっていて、私も時間の都合がつく限り、劇団と同行しては楽しんでいます。札幌で見る芝居と同じものでも、外国での公演では観客の反応がかなり違って、それ故に役者の演技も微妙に変化し、まるで別の雰囲気の芝居へと変身します。3年前にハンガリー・ブダペスト公演「亀、もしくは・・・」は、そんな変化を実感しましたね。毎回、劇場客席後方の端の席から、舞台と観客の両方を観察していました。札幌よりもよりはっきりした笑いに、役者も乗ってくる様子がよく分かりました。後日、出演したある役者に「最初は緊張していたようだけど、次第に乗ってきたのではないの?」と聞くと、彼は「いえ、いつもと何も変わりませんでしたよ」と、平静を装っていました。これが役者のプライドと言うのでしょうか。海外公演の後、再度札幌で同じ芝居を見ると、大きく成長した姿を確認出来て、本当に嬉しかったものです。進化する芝居を目の当たりにした時、たまらない魅力を感じます。有名な役者を観に行くというのも足を運ぶ大きな動機だとは思いますが、若い役者が経験を積むごとに成長して育つ姿を追うのも、また楽しみです。

昨年は、北海道文化財団と韓国光州市との交流プログラムの初回として、北海道演劇財団TPSが光州市で「冬のバイエル」の公演を行いました。その時の様子を演劇財団会報に寄稿しました。

1012日から18日まで、韓国光州公演、ソウル演劇協会との交流協定調印の二つを目的に、TPSのカンパニーとともに参加しました。

光州市は1980518光州民主化運動でも世界的に有名で、地元の方々も「民主化運動の聖地」として、誇りを持ってこの地を語っていたのが印象的でした。公演の合間のわずかに見つけた時間に、TPSのメンバーとともに、この時亡くなった10代の方々が数多く埋葬される共同墓地・記念館も訪問しました。

今年の「2007光州平和演劇祭」のテーマは「疎通」で、多様な方々とのコミュニケーションといった意味と理解いたしました。TPSの公演は、北海道文化財団様の推薦により今回実現し、9日間の演劇祭の一環として、二日間二公演で、合計400名のお客様が会場に足を運び、唯一の外国劇団でもあり、大変大きなインパクトを与えました。

初日公演の冒頭、光州演劇協会パク会長がお客様にご挨拶をしました。その時は言葉も判らずに過ごしましたが、終了後に木村さんからその趣旨を聞くと、「今日は子供さんも多くいらっしゃっています。万が一騒いだり、ぐずったりしたとしても、決して叩いたり叱ったりはしないで下さい。なぜなら、将来の韓国の演劇を創っていくのは彼らなのですから。」と語ったそうです。

もう一つの目的は、ソウル演劇協会との交流協定調印でした。毎年11月開催の「札幌劇場祭」と、5月開催の「ソウル演劇祭」をベースに、毎年交互に公演を行う事他、今後交流を深めて行く枠組みで合意しました。「札幌劇場祭」に参加の団体を代表して、北海道演劇財団の上澤理事長の代理として署名して参りました。早速11月末から12月上旬に、今年のソウル演劇祭で最優秀賞受賞の劇団「青羽」の公演が、シアターZooで予定されています。この間、現地で粉骨砕身ご努力頂いたKさんのご活躍に、心から感謝申し上げます。大きな事業のスタートには、必ずキーになる方々のご努力がある事を、あらためて認識し、感動致しました。

こうして、韓国の若い世代と札幌の演劇人の交流がスタートしています。先日16日、光州市からの「青い演劇村」による「音楽詩劇:阿娘別曲」を、琴似のコンカリーニョで見ました。満席の熱気の中で、韓国伝統音楽と旋律、身振り、オブジェ等を盛り込みつつも、ストーリーは懐かしさを感じる悲しい愛の物語。代表のオ・ソンワンさんは、昨年私たちが韓国を訪問した際に、空港まで出迎えてくれた方です。彼らの伝統の再解釈、現代化、大衆化への挑戦意欲を強く感じました。昨年11月のソウルからの劇団「青羽」の芝居でもそうだったのですが、独特の身振り・ステップ等で、どういう意味なのかを質問すると、その背景に韓国文化の奥深い伝統芸能がある事の説明を聴いて、一層作品を楽しむ事が出来ました。まさに演劇を窓口として、「交流」の真骨頂だと思います。今回は交流会には参加出来なかったのですが、昨年秋は公演直後の役者・演出家との交流会に出席して、舞台で見せる姿とは違った役者の美しさが魅力的でした。

先日の琴似では、終了後会場外で私が誘った若い経営者が言っていました。「何か元気を貰いました。映画とは違う同じ空間のすぐ近くで熱演する生身の姿から、エネルギーを感じました」と。

いつか近いうちに、発祥の地と言われる光州の「パンソリ」を生で聴きたいと思っています。