ハンガリーでの大汚染事故

Posted by 秋山孝二
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 先日、ハンガリー出張中に、地元の方から2年前に起きた「同国史上最悪の化学災害」についてお話を伺いました。私の記憶では、当時何か新聞紙上で赤い色の写真があったようなといった程度でしたが、その後はすっかり忘却の彼方へ。

 その地元の方々がおっしゃるには、ハンガリーでは、EU加盟前は新鮮な野菜とかミルクが豊富だったのですが、EUに加盟して以来、身近な食物が手に入りにくくなったと不満げでした。地産地消だった優れた産品が広域連合になって広く流通することになり、地元のそれらが手に入らなくなる不条理、もう一つ、いろいろな分野での「基準」が、地域の理念とか特異性が無視されて、悪い意味で「標準化」された、或いは「より緩い基準に統一された」、そんな弊害を実感を持って語ってくれました。

 2010年10月4日に起きたこの事故では、同国西部アイカ(Ajka)のアルミニウム精錬工場の廃液貯水池から、周辺地域に110万立方メートルの有毒な赤い汚泥が流出し、10人が死亡、約150人が負傷したとのこと。その後、ハンガリー国内にとどまらず、ヨーロッパ全体の環境汚染問題へと発展して、深刻な事態になっているそうです、ヨーロッパの「食糧倉庫」としてのハンガリーとしてもですね。原因は、老朽化した巨大な貯水槽がひび割れて、膨大な有毒な廃液が流れ出たと、きわめてシンプルなのですが、何か底知れぬ恐怖感を抱きます。

ニュース報道はこちら:http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/accidents/2764863/6303707

 

 日本に戻ってからインターネットで検索してみると、この事故に対して、北海道大学スラブ研究センターの家田修先生が、EU基準と国内基準の二重性に関して、詳細な論文を書かれています(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/japan_border_review/no2/07_ieda.pdf)。その中に、「国際メディアは第一報として赤泥流出事故を大きく取り上げたが、その後、なぜか全く報道が途絶え、事故の経過や原因については霧に包まれたままとなった。しかし現地での調査などをもとに事故の背景を調べてゆくと、単なる一企業の産業廃棄物事故を越えて、ハンガリーとEU(欧州連合)、さらには日本も含む世界全体が抱える環境問題に行き当たる」と述べています。

 家田修先生が今年4月に主催された講演会(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=12476)は、私も出席しました。

 今回のこのお話は、たまたまブダペストで地元に住む方のご自宅で食事中の話題でした。経済成長と環境問題、「島国日本」とよく言われますが、孤立している訳ではありません、日本海、オホーツク海、太平洋でつながっていると考えれば、日本における環境問題も、まさに即、世界的課題となるのでしょう、とても他人事とは思えませんでした。