出張の合間に、時々相手の都合によりアポイントの時刻が変更になって、ポッカリ時間が空く時があります。先日も急に獲得できた時間があり、映画「私は貝になりたいhttp://www.watashi-kai.jp/」を見ました。中居正広・仲間由記恵が出演で人気と聞いていましたが、予想以上に映画館にも若い世代がかなり来ていました。
私にとっては50年程前のフランキー堺・新珠三千代出演http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD26185/cast.htmlを題名から思い出します。何だか幼い自分には大変怖い映画で、途中で出てきたか、テレビを見ていて途中で消したか、いずれにせよ最後までは見ていなかった記憶があったのです。先日も薄れた記憶を蘇らせるつもりもあり足を運びましたが、判決が下った後、再度呼ばれて死刑執行を言い渡された場面で、場内から「えっ!」という悲鳴とも言えない声があちこちで聞こえました。正直言って私は、ここで減刑或いは無罪はないだろうに、と中居ファンには冷たい言葉を心の中で浴びせていました。
その後、家に帰って妻とその話をしていると、今年の夏前に東京の親戚から、「私は貝になりたいの主人公の妹と同級生だった」との便りがあったとの事。嘆願書の署名を集めて歩いた妹との話に、私は「主人公の妹ではなくて奥さんだろう?」と訊きかえしたのです。ところが、確かに妹であるという事と同時に、今年の8月に、原作「私は貝になりたい―あるBC級戦犯の叫び 加藤 哲太郎 (単行本 - 1994/10/25)新品: ¥ 1,680 (税込)」に基づく中村獅童のテレビhttp://www.ntv.co.jp/watakai/が放映されたと、更に続きの話を聞きました。先日の映画館で悲鳴をあげた人たちは、今年8月のこのテレビドラマを見た方か、原作を読んだ方だったのかも知れないと、その時初めて気がつきました。
私は恥ずかしながら今回、その加藤哲太郎氏の著書と橋本淳氏の脚本とが、かなり違ったストーリーになっているのを知りました。著書を読むと著作権を巡っての争いもあった経過も記載されています。「似て非なるもの」というのはかなり厄介で、題名は同じでも、最初の設定が大幅に違うこと、途中からのストーリーが大きく違うこと、そしてその結果、物語のテーマが変わってくること、を感じました。加藤哲太郎氏の著書に基づくと、結果的にご本人は生還されることにより、家族の愛情とか絆とかが中心に据えられてくる感じ、同時に占領軍へのイメージも橋本氏の脚本とは大きく違ってくるような気がします。それに対して昔そして今回の一連の映画は、歴史及び社会の不条理・理不尽さが前面に出て、更には東京裁判それ自体への疑問という所にまで発展する方向さえ考えさせられます。脚本に特別な意図があったとは考えたくはないのですが・・・。現在は、原作の欄にはお二人のお名前が記載されています。
「戦争が引き起こす不条理」には変わりはありません。今回、ふとした時間から随分新しい発見をしました。