日本の銀行窓口は今、・・・

Posted by 秋山孝二
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 先日、外資系銀行のスイス人幹部と、久しぶりに食事をする機会がありました。彼は日本に住んだ経験もあり、日本語も大変流暢です。アベノミクス、国際金融の現状等、日々の日本国内のメディア情報では全く理解できない現状について、大変鋭く新鮮な話でした。私が何かのついでに、昨今の銀行窓口の顧客不在の対応についてコメントしたら、それへの彼の発言に大笑いでした。

 日本の銀行のカウンター・待合ロビーは、病院の待合室と全く同じような雰囲気だと。居るだけで具合が悪くなる、そうです。まさに言いえて妙と感心しましたね。彼は、ある時に、何となく銀行ロビーで立ってテレビを見ていると、「どうぞお座りください!」と慇懃無礼にフロアーの職員に言われたとか。手続きにも会話無しでただひたすら待たされるし、とにかく異常な程に「本人確認」にこだわり続けて、お客様ではなく、まるで犯罪者扱いである、と。ホテル他のサービス業で、世界の人々を感動させる日本の接客スタイルなのに、どうして銀行窓口だけがああも劣悪なのかと、強い調子で指摘していました。

 そしてさらに彼は、「日本という国は、モノづくり産業がベースの長い歴史があるからでしょうか、商品を買ってくれる方は『お客さま』だと思うのですが、『権利』とか『お金』を買う人々はお客さまとは理解しない潜在意識が銀行幹部にあるのでは」とも語っていました。

 実は、この話、この1ヵ月に、私自身が不快に感じた複数の体験からも全く同じ印象です。

 その中の一つ、札幌で法人の普通預金口座を開設しようとある都銀の札幌支店窓口に行きました。あらかじめ分かっている必要書類をすべて整えて窓口へ。若い行員が最初に応対してきましたが、用件を告げると奥にいる比較的年配の男性行員へチェンジ。「設立後6か月以内の法人の場合は、追加で以下の書類が必要になっています」と、ぶっきらぼうに言いました。「そんなこと、いつからそうなったのですか」と私、「昨年11月から、警察庁の指導でなりました」と行員、「それはHPか何かで明示されているのですか」と私。「全銀協でもそう取り決めていますし、たぶんHPのどこかに掲載になっていると思います。これをご覧ください」と、一枚のチラシを渡されました。そのチラシには以下の文言が。

<口座開設される法人のお客さまへのお願い>~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

最近、世間では法人名義口座を悪用した、いわゆる投資勧誘詐欺等の犯罪が数多く発生し、社会的にも大きな問題となっております。このような現状を踏まえて、警察庁は金融機関に対して、口座開設手続きを厳格化するように要請しております。

弊行ではこうした金融犯罪を未然に防止するために、新規口座を開設される法人のお客さまに下記の事項についてお願いをいたしております。お客さまにはご不便、お手数をおかけすることになりますが、なにとぞ、ご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 この銀行、私は企業経営者として40年以上取引があり、秋山財団も設立以来25年以上も口座を開いているのです。このチラシの最後にさらに「ご留意事項」と書かれています。1)お申込みから口座開設までに、2週間程度を要することがあります。 2)必要に応じ、追加の確認資料のご提示をお願いすることがあります。 3)お申し出にお応えできずに口座開設をお断りすることがありますが、あらかじめご了承くださいますよう、お願いいたします、ですよ。

 「資料が揃っていても、口座開設を拒否される場合もあるのですか」としつこく質問する私、「そうですね、そろっていれば開設できるものでもありません」と無表情の行員。新規口座開設はこの銀行にとっては「迷惑行為」と言わんばかりの窓口対応でした。

 私は水戸黄門だとは言いませんが、目の前のオレを誰だと思っているのだ!と、思わずフロアー中に聞こえる大声で叫びたい気持ちでしたよ。ただ、この話、落ちがあるのです。チラシの目立たない場所に「*」印でこう書かれています、「追加資料については学校法人、宗教法人、一般社団法人、社会福祉法人などの法人は除きます。」と。そして、今回私が口座開設を申請しようとしていたのは、「一般社団法人」だったのです。

 一緒に手続きに行ったもう一人の方と、「こんな新規口座開設の縛りを厳しくして投資勧誘詐欺が減ると思う?今あるすべての口座開設者の調査をしなければならないのが筋でしょう。それは取りも直さず、これまで認めてきた金融機関自身の社会的責務じゃありませんか。私が詐欺師だったら、除外されているこれら学校法人、宗教法人等を使っていくらでも悪事を企てるよね」、と。

 この一連の話で思い出したことがあるのですよ、先月の吉田学園の大学新設(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=16697)にまつわる田中文部科学大臣の「待った」事件、それと以前、国家公務員削減で新規採用を大幅に削減する政策を打ち出したこと等をです。今、すでにある法人、人々の再評価とリストラを抜きに、新しくできてくる前途有望なものの入口を狭める愚策、これは改革・イノベーションにおける誤りのイロハだと思うのです。

 今、新しく「起業」する若者、新規参入者が、閉塞感を突き破る起爆剤と喧伝されているにもかかわらずこの高いハードル、こと金融の世界では的外れの事件防止策に終始している様子、意味の分からない「手数料」で稼ぐバブル崩壊後も何も変わらぬ「全銀協」頼みの日本の金融業界、また世界から大きく取り残されてしまっていますよ。目を覚ませ、日本の間接金融、銀行界、金融機関幹部!、ですね。