構想日本(Japan Initiative:http://www.kosonippon.org/mail/bk100408.php)の「第153回J.I.フォーラム」が開催され、今回は「景観運動から社会づくりへ」と題して、東京・国立市のマンション計画見直しを求める運動で、最高裁の「景観利益」を認める画期的判決で決着をみた事例他の検証が行われました。この時のグループが中心となって、「景観市民運動全国ネット(景観市民ネット:http://keikan-shimin.net/)」が設立されました。
当日はパネラーとして、辻井喬さん、国立市長の関口博さん、石原一子さん他豪華メンバーが一市民として、壇上から貴重なメッセージを発信されました。
事例としては4つのフィールドでした。
1)東京・国立市マンション計画見直し運動:http://www.keikan-shimin.net/1234416727532/、 2)千葉県・関さんの森ミュージアム:http://homepage3.nifty.com/matsudo/seki/seki.top.htm、 3)東京・小石川の大谷美術館「銅(あかね)御殿」:http://homepage2.nifty.com/Flute-music/0906to.pdf、 4)龍谷大学・みらいの環境を支える龍谷プロジェクト:http://www.ryukoku.ac.jp/about/pr/publications/69/04_closeup01/index.htm、です。
国立市の運動の代表者・石原一子さんは、高島屋の広報室長の経験もあるキャリアウーマンです。退社して一市民となって初めて、身の回りの環境に目がいくようになったと率直に話され、同時に北海道阿寒湖畔の前田一歩園財団(http://www.ippoen.or.jp/)創設者・前田光子さんを例に挙げられて、民間人の志が景観を守るポイントであると語られました。
作家の辻井喬さんは、「国立の名前の由来は、国分寺と立川の間にあるところから来ています。父・堤康二郎が最初にマチの設計を行い、先ほどのように父を褒めて頂くのは滅多にないことで光栄です」と、冗談まじりのお話でした。マチは建物だけでは成り立たない、資本の横暴が目に余る昨今で、クルマが主体(産業が主体)のマチづくりとなり、ヒトが二の次になっている現状を辛口でコメントしていました。
その他、千葉県松戸市の「関さんの森ミュージアム」も、東京・小石川の「大谷美術館」も、国の重要文化財の隣に高層マンション建設計画が勃発して、その暴力的発想の計画に批判が集中しました。裁判の判例でも、確実に時代の変化が反映されているようです。当初の「日照利益」が「日照権」へ、「眺望利益」が「眺望権」へ、そして「景観利益」が「景観権」へと進化してきた歴史です。特に専門家の視点からは、国立市での運動における最高裁判決は、1)「景観利益」の明確化、2)明確に地域住民の総意が示されていれば認められること、3)景観被害は不明確で、明確な証拠の存在が必要、との意味あいを明らかにしました。
思い起こせば6年前です、秋山財団事務所の隣に突如11階建マンション建設計画が掲示され、それに対して地元住民が集まり「宮の森の環境を守る会:http://www.jichiro.gr.jp/jichiken/report/rep_hokkaido32/3-1/3-1-jro_3151102/index.htm」を立ち上げました。今回事例となった4つの現実とほぼ同じスタンスのその地に暮らす住民の強い意思表示でしたね。
行政のスタンスは一貫して従来型の「建てる側の権利擁護」に終始しましたが、結局は市民提案の地区計画策定の結論を導き出しました。その後近隣の地域の活動へのアドバイスを通して、一連の活動の連鎖が生まれた画期的な事例となりました。
時代は確実に変わって来ているし、これからはもっともっと自立した市民の提案を行政自体が採用する仕組みが必要ですね。先日のフォーラムに集った皆さまの意識の高さと方向性は、私に限りない元気を与えてくれました。日本もまだまだ捨てたものではない、そんな気になりました。