NHK 『戦争特集』 二題

Posted by 秋山孝二
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 NHK・BS1スペシャル『歩兵第11連隊の太平洋戦争』は、昨年12月の再放送ですが、8月の終戦特集番組の中で一つの部隊の顛末を追いかけた優れた報道でした。

* 歩兵第11連隊ーー> http://burari2161.fc2web.com/hohei11rentai.htm

 大変歴史のある部隊で、編成後の初陣は「萩の乱」、続いて西南の役にも出陣し、日清戦争では平壌(ピョンヤン)を攻略したようです。その後、北清事変、日露戦争、シベリア出兵にも参戦、さらに日中戦争を経て南太平洋の戦いに向かい、敗戦を迎えます。幾多の危機を乗り越えて捕虜になり辛くも生き残った方々の貴重な証言が胸を打ちます。

 もう一つは、NHKスペシャル『太平洋戦争 1942 大日本帝国の分岐点(前編・後編』、80年前の1942年、明から暗へと一変した「大日本帝国」の分岐点を見つめた番組、アーカイブス映像とITによる多くの日記の言葉分析が相まって引き付けられました

* https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/83RG8YMQV8/

* https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/W6XZ8LQ3ZY/

 言葉の時間的推移、報道により国民の熱狂の度合いもうかがうことができます。

 言葉の関連の強弱と言葉の頻度の大小をITで可視化しています。

 一方、アメリカは当初から情報の戦略的意義を十分理解していて、日本軍の電報解読に注力をして、ことごとく作戦を事前に察知して戦況を有利に進めていました、まさに勝つべくして勝った戦いと言えましょうか。

 それに対して日本陸海軍は、ミッドウェー海戦の大敗北以降は特に情報統制と欺瞞が激しく、負けるべくして負けた戦争といえます。

 アメリカは開戦当初から、日本本土爆撃による戦意喪失を狙っていたようで、開戦して間もなくすでに日本本土に接近した空母から発進したB25による爆撃を試みおり、その16機の飛行航路も今回可視化されていました。本土への爆撃は、本来、本土に暮らす多くの庶民に戦争の危うさを伝える重要な出来事にもかかわらず、大本営はその被害を意図的に過小評価したばかりでなく、残骸も見当たらない敵機撃墜報道を平気で垂れ流した事実、そんな状況もこの番組では赤裸々に伝えていました。

 ここ数年、アーカイブ映像ばかりでなく、軍の日誌、個人の日記等の文字による記録をITで分析して可視化する試みが増えています。それらを基にした番組は、私たちに新たな歴史を教えてくれて貴重ですね。この時代に生まれた若者たち、兵士として徴用されて各地を死ぬまで転戦して消費された、時代に翻弄された人生を余儀なくされた、そんな表現は懸命に生きた兵士の方々を冒涜するものでしょうか。前線の多くの兵士たちに比べて、司令部他の陸海軍幹部たちの無責任さは、しっかり歴史に刻んで、多くの犠牲を出して負けるべくして負けた戦争責任をしっかり総括する必要があるでしょうね。