今年を振り返る 2015 (中)

Posted by 秋山孝二
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 1年おきに札幌学院大学で「経営組織論」一コマ15回講義を行っています。年明け早々に2回講義をして終了しますが、今年は「組織の病理」として、東芝問題、マンション杭打ち手抜き問題、化血研問題等も取り上げました。これまでは、10年ほど前の自動車メーカーのリコール隠しを題材としていましたが、次々と明るみに出る今年の企業の不祥事、というよりも「犯罪」については、学生たちにどう説明したら宜しいのか、私はいつになく悩んでしまいましたね、現場の不注意とか怠慢ではなく、明らかに組織の責任ある立場の意図的仕業だからです。これまで何回も使った言葉、「経営者の劣化」が露呈してきています。

* 東芝不祥事&リコール http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201512/CK2015122002000124.html

 「組織文化」は、「伝統」とか「伝承」とかと言い換えても良いのでしょう、今、日本国内の大企業で、その価値を壊している経営者とその取り巻きの連中、内部ばかりでなく監査役とか監査法人も含めて、多くいるような気がします。何年か前に私も出席した経済紙関連主催のフォーラムが東京で開催され、千人以上の聴衆が居たでしょうか、当時の東芝・西田厚聡社長が1時間の講演を行いましたが、私は正直、大きく失望しました、これが経済紙、メディアで評価されている人物かと。内容が陳腐であるばかりでなく、ただ傲慢な姿でした。同じ会場でお話をされたセブン・イレブンの鈴木敏文社長は戦略的で鋭い指摘等、経営者としての存在感を示していました。私は、人に対する自分の直観には自信を持っているので、この時、東芝は大丈夫かなと感じたことを鮮明に覚えています。今年の一連の不祥事を越えた「犯罪行為」を目の当たりにすると、それらの兆候は随分前からあったのだと妙に納得します。

 しかし、一方では、日本全国には数百年続く企業も多くあり、モノづくりの伝統とイノベーションによりそれぞれの時代に合った価値を提供しています。今月の最終講義では、老舗企業を幾つか紹介し、「変えてはいけないこと」、「変えるべきこと」の判断を的確に行って幾多の困難を乗り越えてきた様子を一緒に学びました、優れた経営者はいつの時代も地道に健闘しているものですね。

 以下は、私の論文から「組織文化」についての引用です。~~~~~~~~~~~~~~~~

 企業が持続的に成長していると、成長をもたらしている企業の外部内部環境を守ろうとする慣性が働き、大きな環境変化へ適応しづらくするリスクはある。あえて自社の成長をもたらしている経営資源や経営戦略とは異なる資源や手法を、自ら獲得していく、経営革新が必要である。そのため組織が一定の成果をあげていたとしても、経営を客観的に分析し、具体的な事象として現われにくい環境変化と経営課題を認識できるようなベンチマークを経営者が持つ必要がある。それに加えて、経営と組織の変革を躊躇せずに実行できるリーダーシップが、経営者に求められる。特に組織文化や成功のパラダイムを変えられる経営者の存在は、長期間にわたる企業成長には必要不可欠である。

 企業の中で舵取りをする経営者が日常の業務に追われていると、企業の外部環境と内部環境の漸次的変化を認識しにくく、環境変化への対応が遅くなってしまう危険性がある。そうした危険性を回避するためには、経営者はぶれない視点を持つことが求められる。ぶれない視点は、組織が受け継いできたDNAとの比較と、他組織との比較の中から生み出されると考える。組織のDNAは変化しない要素であり、現在の経営理念の解釈と形成されている組織文化が組織のDNAから逸脱していないか、判断することができる。そして、ベンチマークとすべき他組織のDNAとそこから生まれる経営理念や組織文化の解釈と比較することは、単一組織の中でDNAを解釈するときの異なった物差しを提供してくれる。

 企業を巡る環境変化を察知する経営能力は、経営者と社員が伝承するDNAを基盤にしたものであり、組織のDNAをしっかり解釈し、経営理念や組織文化として表現できない組織は、また後生へ伝承できない組織は、環境変化に不適応してしまう危険性がある。反面、経営能力はDNAから解釈される経営理念や、経営理念から形成される組織文化を構成要素としているため、漸次的に変化しやすく、大きな変化はしにくい。組織としてのぶれない軸や視点を提供してくれるDNAが、結果として組織の環境変化に対する経営理念や組織文化の適応を防げる逆機能をもたらすこともあり得る。

 結論的に言うと、組織の中のDNAを解釈し、伝承していくためのリーダーシップを発揮するのが経営者である。持続的経営の根幹をなす組織文化が自然に醸成されるのを期待するのではなく、経営者が長期間に渡って耐えうる、優れた組織文化を意図的に育成していくことが必要である。また、秋山愛生舘が医療費抑制に伴う薬価引き下げといった市場環境の変化に直面したとき、株式上場や多角化による組織文化の革新を図ったように、組織の環境変化に対して、組織文化を大胆に革新していくことも時には必要となる。 組織のDNAをその時代の環境に合わせて解釈し、組織文化を革新していくことが、結果として企業を守ることにつながり、そうした時にも経営者のリーダーシップと組織文化の変化を促進できる経営幹部が必要である。優れた組織文化も重要であるが、組織文化自体を変えられる経営者とそれを受け入れる社員も、持続的経営を成し遂げる重要な構成要素となる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 論文コピー おわり

 経営陣の不祥事・不始末の結果、大リストラで現場で働く人々が路頭に迷う不条理は許せません。メディアも「犯罪」としての認識を明確にして、責任の所在を曖昧にしないようにしなければ、今の日本の体たらくに歯止めが掛かりません。とにかく、日本の「ガラパゴス化」は深刻で、国際社会の中での地盤沈下を実感する今年一年でした。そんな中でも未来への展望を切り拓きたいですね。