この数年、市民活動を支える方々から、「企業って利益追求でしょっ!」とか、「経済界って儲けることばかり考えてる!」みたいな話をよく耳にしていましたが、私には実に不本意なのですよ。「それは間違いだ!!」と大きな声で言いたいですね、よく観察すると、素晴らしい企業があちこちに出現している昨今です。
私は商売をする家に生まれ育ち、24時間・365日、自分たちの暮らしよりも会社とか仕事のことばかり考えている経営者しか知りませんでしたし、自分が経営の一翼を担うようになっても、ひと時もお得意先・社員のことが頭を離れたことがありませんでした。「儲け」は、設備投資原資とか、従業員給与とか、メインテナンスとか、自らのリスクで生き残るため、持続可能な企業活動を担保するために必要だと思っていました。そして更に、民間企業経営者が、納税はじめ社会のためとか、人々のために日々活動しているエピソード・経験談を、幼い頃から繰り返し繰り返し耳にしていたからだとも思います。
たとえば、秋山愛生舘の「奉仕の精神」、「民の担う公共・志」、「社会への貢献」といった精神は、私は企業理念だと信じています。ワグナー・ナンドール財団(http://www3.ocn.ne.jp/~wagner/TOP.html)理事長で叔母の和久奈ちよは話していました、「関東大震災時、父母と従業員の献身的大活躍で倉庫の薬を殆ど全部東京に配送したこと、母は必死に薬品の木箱に縄をかけまくったこと。第二次世界大戦中も、母が社員とリュックを背負って立ちどうしの汽車で東京に薬の買い付けに行き、それを売るときに多少の運搬費をいただいた程度だった」と。戦後、叔母の知人の隣人が札幌出身の人で、戦時中家族が病気の際、 適正な価格で分けてもらって命拾いをしたと、涙ながらに知人の手を取って感謝を述べたとも聞きました。
さらに叔母は、「自家製剤の『ネオ肝精』、『デルモライツ』の大成功も、北海道人の健康に役に立つと、父が即座に製造組織を構築し たこと、琴似の工場が火事になって軍部から来ていた材料の水飴が流れ出し、近所の人々が群がってスプーンですくっていたのを見た父が、そんなに物資が窮乏していたのかとびっくりして、『一地方商人がするビジネスでない』と、大手製造業に譲ったことなど、子供心に身内を誇らしく思ったことがいっぱいある」とも、鮮明な記憶として語ってくれます。
昨年末に、(株)スズケン(http://www.suzuken.co.jp/)の社内報が届き、そこには昨年の東日本大震災後に、懸命に医薬品を届けようと尽力する社員の多くの活動が語られていました。「生命関連商品を扱う社会的責任を痛感」、「『何としても薬を届けなければ』という社員のがんばりに驚かされる」、「震災を通して社員の成長を実感」、「みんなの力でセンター機能破たんを回避」、「物流で失った信頼は物流で取り戻す」、「日ごろから本物のお付き合いこそが信頼の礎」、「がんばりの源は『医療を支える一員』という意識」等、「今、伝えたいこと」の特集で、あらためて自らの社会的役割を、お得意先、社員の「絆」を通じて確認したようです。
昨年5月のスズケン出身者の会「ケンユー会・愛生舘支部総会:http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=8734」の様子をこの欄に書きました。「~~~~~~~~~~来賓で名古屋からお越しいただいた(株)スズケンの伊藤副社長のお話によると、3月の東日本大震災では、お得意先の医療機関に必死で医薬品をお届けし続ける一方、スズケンの東北エリアの物流センター、支店等でもかなりの被害が有ったようです。支店屋上に数日間避難したり、犠牲になった方もいらっしゃったと報告もありました。全国で営業展開し、医薬品の流通を通じて日々社会への責任を果たそうとするモラルの高さに感動しながらも、被災とは無縁ではいられない難しさもあるのですね。先日のお話では、被災復旧への投資等も多額に上り、来年の年間配当は、これまでの一株62円から50円へと減配の予定とか。秋山財団運営には大きな打撃であり、来年度事業計画に織り込んで対応を考えなければなりません。~~~~~~~~~」
自らのリスクテイクと顧客への責任を全うせんがための全社一丸の努力を、伊藤副社長の言葉、社内報から読み取り、私は強い感動を覚えました。まさに、民の志の高さ、モチベーションに支えられた個々の判断の迅速性と適格性と言えましょうか。先見性のある優れた企業は、当事者能力も高く、新しい時代の変化に対していち早く対応しています。環境系等の社会貢献を標榜するNGO・NPOも、いつ実行されるか分からない政策に期待するよりも、これらの優良企業とコラボレーションする方が決断スピードも速く、規模も大きく、結果を出すことができると考え始めています。
一方、下記のように、昨年お会いしたスイスの投資家から見る企業と国家の当事者能力の違いに対して、厳しい評価があります。
~~~~~ギリシア問題から始まり、EUについてはかなり悲観的な展望だ。スイスはEUに加盟していないので、スイスの政治指導者に感謝する。それでも日本同様、現在スイスフラン高で、輸出企業の多いスイスもチャレンジだ。ただ、今のところは企業業績は悪くは無い。アメリカも確かに難しい局面だが、それでも一国であり、まだ大統領・政府の統制下で政策変更等、方向性を見い出せるが、EUはその下に各国の政府・議会・国民がいて、あまりに関わる利害関係者が多すぎて、スピードのある決断による転換が難しく危機的である。そんな理由で、「社債」はまだしも、「国債」はリスクが高すぎる。~~~~~~
なぜこんな話を念頭に書き留めるか、それは原発事故における政治、監督官庁幹部、東京電力の経営幹部に対する憤りがあるからです。「民主主義」は本当に優れたシステムなのでしょうか?もちろん独裁が良いとは全然思いませんが、「選挙」とか「国会審議」とか、手段が目的化してやたら時間を浪費する愚、部分最適ばかりで無駄が多く、構想力も欠如している中央官庁の政策、地域独占の電力会社は民間企業としての当事者責任を問いただすと、「国の政策だから」と逃げ込み、ある時は「電力の安定供給の使命」みたいなことを持ち出して電力不足と顧客を恫喝し原発推進を言いだす、私は彼らの無責任さとそれれに無批判なメディアが許せません。
志ある市民の自立した活動と、優れた先見性と顧客志向の企業とがコラボレイトすることが、今、課題解決の最も実現可能な道なのではないかと、確信を得るに至りました。今年一年、「エネルギーシフト」も「環境」も、「企業とのコラボ」をキーワードにして結果を出したいですね。