テレビ・ラジオ・執筆活動で活躍する寺島実郎http://www.tama.ac.jp/terashima/さんが、今月、新著「世界を知る力」をPHP新書から出しました。
2009年という年は、60年安保から50年、天安門事件から20年、ベルリンの壁崩壊から20年という歴史認識からも大きな節目でした。この間、国際社会で目立つのは「中国がやけに順調」ということでしょう。先日の出版を記念しての講演会でも、中国はネットワーク型で発展し、すなわち97年の香港返還、台湾問題を上手くマネジメントし、シンガポールで経済的付加価値を増し、「チャイナが大きく見える」と表現していました。
一方日米関係では、「常識に帰る意思と行動」がポイントであり、冷戦構造が大前提のこれまでの軍事同盟としての日米安保は片肺で、政権交代が実現した今こそ、「平成の条約改正」を行う勇気を持つべきだと語っていました。経済・産業と安全保障について議論をしっかりしなければ日本の戦後は終わらない、とも。
これからの日本においては、「日米同盟の展望」と「東アジア共同体構想」はクルマの両輪なのでしょうね。
今回の新著「世界を知る力」は、これまでの著書と少々趣を変えて、学生に語りかけるような雰囲気で分かりやすさを最優先にしながら、新しい視座を提供していると思います。自らの固定観念から脱却し、ネットワークの中で考える必要性、そして自分たちの立ち位置の確認、知を志す覚悟等、これまでの講演で繰り返し語られていて、大変示唆に富むメッセージの数々です。私も知り合いの学生たちにこの本を紹介する予定です。
そして、先日の講演会での最後の寺島さんのフレーズが印象的でした。政権交代後の日本国に対して、一言で表現すると「限りなきファシズムへの危惧」です。フランス革命後のナポレオン・ボナパルトの出現、ワイマール共和国からのアドルフ・ヒットラーの出現等、今のこの国へのメッセージともとれる過去の歴史から学び、新政権をはじめとした「状況」に対して引き続きの市民の監視が重要だということです。歴史が大きく変わる時期、一時的に不安定な状況の中で私たちは安易に「即断する指導者」による第3勢力を熱望するのではなく、決して「思考停止」、「白紙委任」はしないで、注視し続けなければなりません。メディアの先導・扇動に惑わされずに、しっかりした視座から声を出し続ける必要がありますね。
今、まさに我々の「知性」が問われている時だと思います。