福島の「牛飼い」吉沢正巳さんを追いかけたNHK総合の番組『こころの時代:185頭と1人』は、「いのちとは何か」を深く考える素晴らしい内容でした。
福島県浪江町にある「希望の牧場」。
原発事故により出荷できなくなった肉牛を飼い続け、自らを「牛飼い」と呼ぶ吉沢正巳さんが「命の意味、生きている価値」を問い続ける日々を追った番組です。「どんな命にも意味があり、それを全うするべきだ」との信念から、原発事故で出荷できなくなった肉牛の世話を続け、全国から寄付を募り商品にならない牛に餌をやり、生かし続ける日々。
汚染牛を一切処分せず、自然の流れのまま命を全うさせようと懸命に世話する姿を追う姿、特に牛の命の看取りの場面に言いしれない感動を覚えます。
ある時期は渋谷の街頭で自らの主張を訴え、多くの人々の賛同を集めたりはしたけれど、必ずしも持続した応援の力にはならなく、いつか一人去りまた一人去っていく状況も。
これまでの多くの支援にもかかわらず、原発事故から13年がたち、高齢により衰弱する牛たちを看取りながら、果たして生かすことに意味があるのか、一見無意味にも思える営みを続ける吉沢正巳さん、命と向き合う日々の現実と向き合っての取材に基づいた番組は心を打ちました。