日本柔道の園田隆二監督が女子代表への暴力で辞意表明をし、その後退任したニュースは衝撃でした(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130131/t10015201831000.html、http://www.hokkaido-np.co.jp/news/sports/437981.html、http://www.tokyo-np.co.jp/article/sports/news/CK2013020102000121.html)。
ロンドン五輪代表を含む柔道のトップ選手15人から暴力行為とパワーハラスメントを告発された女子日本代表の園田隆二監督(39)が、先月31日、東京都文京区の講道館で記者会見し、「選手に対しては本当に申し訳ない。私の指導力不足だった」と謝罪して、辞意を表明しました。全日本柔道連盟(全柔連:http://www.judo.or.jp/)に辞任届を2月1日に提出し、全柔連は園田監督を戒告処分とし留任させる方針でしたが、受理されました。それに先立ち、日本オリンピック委員会(JOC:http://www.joc.or.jp/)は都内で理事、監事を緊急招集して会議を開き、全柔連の上村春樹会長(61)から出されたJOC選手強化本部長職の辞任の申し出を受理しました。
今回の件、メディアによると、女子選手たちは昨年秋に、全日本柔道連盟に告発したようですが、連盟幹部はそれを取りあわず、園田監督の続投を発表した経緯が読み取れます。そんな状況の中で、彼女たちは、より当事者能力のあると思われるJOCに告発書を提出し、事実が明るみになりこのような事態に至りました。それでもなお、上記のような「戒告処分」で握りつぶそうとしていたのです。
冒頭に「衝撃」と書きましたが、少し冷静になってみると、大変残念ですが、昨年のオリンピックの成績等に鑑みて、何故か妙に「腑に落ちる」私でした。こんな指導を受け続けてきた選手たちでは、国際大会の価値観の多様な中では力を発揮できないだろうなと、納得してしまうのですね。
昨年8月にこの欄に書いた「ロンドン五輪、雑感:http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=14041」で、私は柔道界についてコメントした部分がありました。~~~~~~~~~~
メディアは、柔道、体操、バレーボール等を「日本のお家芸」と表現されていますが、そういった認識がすでに過去のものとしなければならないのではないでしょうか。柔道の山下泰裕さん、バレーボールの松平康隆さんらが、国際組織の役員に就任し、それぞれの国際化にご尽力されて、世界各国が日本のスタイルを研究し、結果的に世界で担う人口が大幅に増えたのは間違いありません。日本が弱くなったのではなく、現在の幅広い普及状況を見誤って、未だに「お家芸」などと悦に入っている、こだわりの意識が、日本自体の進化を阻害したのではありませんか。そんな意味では、サッカー女子・なでしこジャパンのこの五輪での健闘は、昨年のワールドカップ優勝(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=9370)を経て、各国チームの研究に打ち勝っての銀メダルですから、「銀」以上の価値がありました。
柔道は未だにその呪縛から抜け出せていない、コーチも選手も「ゲームメーク」のシナリオを持ち合わせていませんね、ただひたすら練習の延長でがむしゃらに突き進む、或いは練習と本番との勝手の違いで委縮している、負けた試合後のインタビューを聴いていると、意識の遅れにこちらが驚く程でした。監督・コーチはどれ程の対戦相手のデータを持ち合わせていたのでしょうか。もっともっと若いうちに世界の強豪との中で切磋琢磨して、「試合に勝つ」ストーリーメイクを学ぶ必要があると私は思います、別の言い方をすると、自分が今戦っている「試合のマネジメント」をする能力です。日本柔道の「カタチ」は目の前の試合に勝ってから言ってくれ、そんな気が私は今回の試合通じて感じました、育て方・指導者の問題であり、今のままでは選手が可哀そうです。
~~~~~~~~~~~~引用 おわり
今回の事態を見ていると、まさに「選手が可哀そうです」そのものになってしまいました。オリンピック代表候補になる選手たちは、すでにそれだけで十分実力のある人材ばかりでしょう、その人材をさらに頂上を目指すレベルに育て上げる監督の力量をつけるには、やはり精神力だけではない専門的なコーチング技術と人格が必要なのだと思います。どのスポーツ界でも、優勝監督とか金メダリストは、どこか「哲学的」な発言が多いような気がします、「極めた者のみが達する境地」みたいな雰囲気ですね。サッカー、バレーボール、水泳の世界は、もっともっと開かれた大人の教育の感じがしますし、それ故に良い成績も残せるのでしょう。
日本の「お家芸(おいえげい)」というのであれば、今回を機に連盟人事も一新して、まさに「再出発」してもらいたいと思いますね、問題は、その「覚悟」と現状認識があるかどうかですが、今回の告発した女子選手たちのような「覚悟」が、ですね。因みに、これだけの事件がありながら、全柔連HPには、今日現在、お詫び他のメッセージは何も記載されていません。
責任ある人がきっちり責任を取り、過去の成績ではなく、監督・コーチの技量・人格を持ち合わせた人材がその任に着く、そして、それらをしっかり選考できる「装置」が組織内に必要なのだと思います。もし、組織内で難しければ、広く人材を外に求める見識も重要だと思います。それぞれのスポーツが、いつか来た道の「ムラ社会」では、これからの強化など届くはずがありません。