アメリカの「現場力」?

Posted by 秋山孝二
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 数年ぶりにアメリカ東海岸・ボストンを訪問して、「現場力」について幾つか感ずる所がありました。

 何回も書きますが、私がアメリカに最初に行ったのは、1971年9月で、40年以上前になります。それ以来、数え切れないほど、主として企業訪問等で各地に足を運び、ハワイ・オアフ島ホノルルには6ヵ月間家族で暮らしたり、その都度、広大なアメリカの変化を体で感じています。今回、成田・ボストンの直行便が就航したのを敢えて使わずに、行きはワシントンDC経由、帰りはシカゴ経由で長時間のルートだったのも、何か昔との各地の「違い」を体感してみたいといった、こだわりでもありました。

ボストン・ビーコンヒルの仲通り

ボストン・ビーコンヒルの仲通り

 行きのボストン・ローガン空港に到着した後、預け荷物のピックアップでは、40分以上待って探しましたが、見つからず。早速バゲージ・クレームのカウンターで調べてもらったら、乗り換えたワシントンDC・ダレス空港で、1時間での荷物の積め替えが間に合わず、まだ空港に置かれたままとか。係の女性は、「後続の便でこちらに届くので、今夜中には滞在のホテルに届けます」と、笑顔(?)での対応でした。私は、「明日お会いする大切な方への品物があるので、是非とも今日中でなければ困る」とかなり強い調子で言って、午後3時頃にホテルにチェックインしたのです。荷物が届いたのは夜の9時過ぎ、外側が汚れに汚れての到着でした。因みに、空港カウンターで手渡された「Delayed Baggage Report」には、以下のように書かれています。

Dear Vlued Customer,

We regret that your baggage was not available to claim after your recent flight. Everything possible will be done to locate your property and return it to you promptly.

For information regarding your delayed baggage, contact the United Airlines Baggage Resolution Center at its 24 hour, seven day a week number: ・・・・・・・・・

 こんなペーパーがすぐ出て来るからには、日常的にこのような遅れがあるのでしょうね。ボストンでのこの種のトラブルは、私の知る限りこれまで3回、自分自身では、ロスアンゼルス空港で乗り換え便への積み遅れで日本に届かなかったことに続く2回目の出来ごとでした。ロスの場合は、1980年代、荷物の中にあった品物が盗まれていました。その他には、スーツケースの破損が2回、札幌に戻って保険で新しくしましたが、とにかく、荷物の作業に関わる労働力の質が、日本とは比較にならない程レベルが低い、これはこの40年間変わりませんね。この質の向上は、国民全体の教育水準に関係するはずで、それよりバックアップ体制を整えるとか、無人化・自動化の構築の方が安上がりと考えるのでしょうか。これらの仕事の不手際ゆえのコストは、会社的には膨大だと思うのですが。

 帰る時は何事も無くと祈っていましたが、そうはいきませんでした。早朝ボストンを発つ飛行機便だったので、ホテルを午前5時過ぎにチェックアウト、フロントではこちらから言う前に、「タクシーをお呼びします」と笑顔(?)で対応、係のベルボーイがタクシーを玄関口に呼びました。するとそこに後ろから突進してくるもう1台のタクシーが。先に来たタクシーに荷物を入れようとしたところ、運転手同士が、「オレの番だ、並んでいる順番だ」、と何とつかみ合いになりそうな大喧嘩、仕舞いには「警察を呼ぶぞ!」等までヒートアップ、その間ホテルのボーイはどうしたらいいのか分からず私の顔を見るばかり。私は、どちらでもいいんだ、早く空港に行かなければ乗り遅れるよと。中国では並ばずに混乱ですが、アメリカでは並んでいても混乱です!

 結局、後から来たガラの悪い運転手の車で空港に行ったのですが、どこかとんでもない所に連れて行かれるのではないかと、内心は穏やかではありませんでした。ところが、間もな空港へ、支払う段になってみると、このチャージが到着時にホテルまで掛った値段より3割も安いのです。「人は見かけによらない?」、「やり手の運転手?」、「到着時は何だったのか?」、何とも理屈では説明のつかない、早朝の一場面でした。それにしても、ホテルのあのベルボーイは、一体何のために居るのかですよね、あれではホテルの経営者も頭が痛いだろうと、帰りの飛行機の中でも考えていました。

 アメリカの空港で、場所が分からずに近くにいる職員に聞くと、「あの係員に聞くと分るよ」と返事する係員が多くいます。「それだったら、お前は何のためそこに立っているのか!」と一喝したくなる時も多かったです。雇用促進は分かりますが、もう少し現場への教育投資をしなければ、サービスにもならないだろうにと思います。

 ひるがえって日本のこの種の「現場力」は、世界一レベルが高いのではないでしょうか。礼儀正しいし、時間に正確だし、間違いが殆どないし、それ故に日本の責任者・経営者は、これに甘えて強靭な経営力を持ち得ない、そんな気がします。時々は、「too much:やり過ぎ」の感もあります、コストの掛け過ぎ?仮に、日本の現場力とアメリカの経営力(システム)が合体すれば、かなり競争力のある企業になるでしょう。いや、アメリカの経営力もそれ程のものではないと、どなたかにいわれそうですが・・・・。

 アメリカの飛びきり優秀な人材・機能は認めますが、生活者目線からは、それらに届くまでの「現場力」が、如何にもレベルが低い、あらためて「確信?」を得ました。