指揮官、ザッケローニ

Posted by 秋山孝二
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 先月の「AFCアジアカップカタール2011:http://www.jfa.or.jp/」では、日本代表「SAMURAI BLUE」が見事激戦を勝ち抜いて優勝しました。これまでの日本代表チームよりはるかに粘り強く、大きな感動を与えてくれました。 

 考えてみれば決勝までの道のりは、とても順調と言えるものではありませんでしたね。退場者を出して10人になる試合、先制された後の逆転劇、死闘の末のPK戦など、数々の劣勢や逆境を跳ね返して勝ち上がってきて、決勝戦も延長の末の劇的勝利でした。今までのサムライブルーにはない、個々の選手の精神力の強さと冷静さが備わってきたように思えます。

 試合前の記者会見で、キャプテンの長谷部が語った言葉が忘れられません、「日本人であることに誇りを持って戦いたい」。新しく就任したザッケローニ監督の指導力の賜物、早くもチームに浸透させたチームカラーと言えるのでしょう。それにしても、戦略・戦術、選手の見極めと投入の妙、監督としてのかなりの蓄積を感じさせる感動的采配でした。

 アルベルト・ザッケローニ、 1953年4月1日、イタリア生まれ、57歳。新聞によると、「地元メルドラで、サイドバックの選手としてプレーしたが、肺炎のため17歳で引退。家業のペンションで働き、保険代理店を経営しながら、サッカーのコーチとして腕を磨く。30歳で下部リーグのチェゼナティコの監督に就任。その後は、ウディネーゼをはじめ、ACミラン、インテル、ユヴェントスなどセリエAの強豪クラブを指揮。ACミランでは1998-99年シーズンにリーグ優勝し、年間最優秀監督に輝く。家族は夫人と一男」とあります。決して選手としては陽の当たるサッカー人生だったとは思えませんが、その後の「指導者」としての修練には奥行きを感じさせます。特に一人一人の選手のモチベーションを、心にくいほど把握して高め、ベストの状態を作り上げるその手腕は、今後に一層の期待を持たせてくれます。

 先日は地元イタリアでの記者会見で、アジアカップを「素晴らしい経験だった、控え選手が素晴らしかった」と振り返ったようです。。試合には1試合も出なかったDF森脇(広島)の名前を唯一あげて、「盛り上げてチームを支えてくれた」とも。テレビで見ましたが、ずっと同行していた日本のスポーツ記者の一人も、やはりこの森脇選手を「MVPだ」と言っていましたね。ザッケローニ監督は、 その後は「日本愛」を強調して、地元記者の質問に、「教育、しつけ、清潔さ、すべてが素晴らしい。物価は2倍だが、お金を払うのも気持ちいいぐらい」、「私は半分日本人だと思っている、日本に恋している」とまで語ったそうです。

 そんな話を聞くと、何かイザベラ・バードの著書とか、渡辺京二著「逝きし世の面影」とかを思い出しますね。

 サッカーに対するひた向きさと、哲学を感じます。オシム監督も同じ雰囲気を持っていましたが、やはり一流の監督には「思想・哲学」が必要なのでしょう。高校野球監督の我喜屋さん、香田さんにも、共通するものがありますね。日本代表監督に招聘した日本サッカー協会の眼力にも拍手です。

 年の初めに、素晴らしいドラマを見せてもらって、久しぶりに気持のよい朝を迎えました。