初めての土佐の地で(3:最終)

Posted by 秋山孝二
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  この地からは多数の維新・改革の志士たちが歴史に登場しています。町なかの通りにも「土佐の誇り」として掲示されていました。

幕末・明治維新に活躍した多くの歴史上人物

幕末・明治に活躍した多くの歴史上人物

 今年のセミナーのテーマは、「今こそ、日本を洗濯いたし申し候――『国民総幸福(GNH)の視点から始める新たな成長理念の構図」でした。http://203.139.202.230/?&nwSrl=258109&nwIW=1&nwVt=knd

 ご承知のように、GNHとは、「G(グロス)N(ナショナル)H(ハッピネス):国民総幸福」という指標です。

http://www.gnh-study.com/

http://eco.nikkei.co.jp/column/edahiro_junko/article.aspx?id=MMECc3010011092007

 基調講演としてブータン王国のジグミ・ティンレイ首相が、「地球規模での幸福な経済成長の実現――GNHの国、ブータンからの提言――」の演題で、示唆に富むお話でした。国内総生産(GDP)を過度に重視してきた資本主義を、「幸せになるための手段と目標を取り違え、限定的な尺度だったGDPを生きる目的にしてしまった。どうすれば人が幸せになるかを忘れた結末」と指摘しました。今日の「富」、「繁栄」に対しての問題提起も鋭かったです。
 生活水準、保健衛生、教育水準、多様でしなやかな環境、地域社会の活力、時間の使い方、統治の質など、GNHを測る指標を4つの柱、9つのドメイン、72の変数で国民に提示している現状を説明し、「歴史や文化、日本人の気質からすると、家族的民主主義の伝統もあり、日本こそGNH社会をつくっていく最も適した国だと確信し、新しい倫理を創り出してソリューションを必ず見つけ出すだろう」と語り、最後は聴衆全員総立ちの拍手でした。

 これまでGNHについてはいろいろな場面で話題としては耳にしていましたが、「都市化がもたらす地域の崩壊」等、現代の先進国が抱える課題認識も実に的確で、昨日今日の議論ではない奥行きの深さを感じました。国王が理念を明示して、首相が具現化していくブータン王国、「物質と精神とのバランスのとれた状態、それが“幸福”であり、これに応えることこそ国家の役割」と明言するジグミ・ティンレイ首相の誠実さに、理想的リーダー像の印象を受けました。

 その後の4つの分科会のテーマは以下の通りです。

1) 日本の「国民総幸福(Gross National Happiness)」――持続可能な成長への必要条件――

2) 国家のあり・政治のあり方――閉塞感の打破に向けて――

3) これからの成長と経営者の役割

4) 民から官を変える――地方が輝く活性化策――

 二日目の特別講演は「人生雑記帖」と題して、2002年に「あかね空」で直木賞受賞の土佐出身の作家・山本一力さんでした。私とほぼ同世代、年を経てくると故郷がどんどん自分の中で膨らんでくると表現されていましたが、全く同感です。長宗我部元親の妹・養甫(ようほ)とその婿・波川玄蕃(はかわげんば)の波乱の人生を通して、戦国の世から今を読み解くお話でした。

 2日間のセミナーで、何回も「危機感の欠如」という言葉が出ていましたが、お見受けする所参加者のかなりはすでに功なり名を成した方々、ブータンのリーダーのお話に対しても、「小さい国だから・・・」とか、「GNHというのはGDPからの逃避でしかないのでは・・・」とか、従来型の発想を抜けきれない(抜ける必要がないと思いこんでいる?)経営者も多かったような気がします。また、会場中央付近の多くの座席に、早々と自分たちの団体名の紙を置きながら、講演が始まっても殆ど空席のままといった状態も見られ、このセミナーに来る以前の心構えを問いたい気持も正直ありました。まだまだの「危機感」なのでしょうね。

 今の日本の現状(惨状?)を変革する担い手は、やはり新しい世代の「突破力」に期待でしょうか。今回の土佐での開催で、幕末・明治の志士たちの「命を賭ける」迫力を、あらためて感じ取った気がします。

    こじゃんと、良かったです!!