西巻糸子さんのこと

Posted By 秋山孝二
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 先月26日、「足利事件」で無期懲役刑での服役中に釈放された菅家利和さんに対する再審が宇都宮地裁であり、無罪判決が言い渡され、同時に裁判長が謝罪をしたと報道されましたhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100326-00000033-mai-soci。謝罪の後、3人の裁判官が立ち上がって菅家さんに深々と頭を下げたそうです。再審で無罪を求めた検察側は同日、控訴しないことを地裁に申し立てたので、無罪が確定しました。「完全無罪」の文字も躍っていますが、突然の逮捕から18年以上を経ています。

  無罪が確定した菅家さんについて、宇都宮地検が無罪を証明する再審結果通知書を菅家さんの本籍地である栃木県足利市に送付し、3月30日付で受理されました。これにより、市が管理する「犯罪人名簿」から名前が削除され、14日開かれる市選挙管理委員会を経て、菅家さんの選挙権も復活するとの記事も読みました。当時のDNA型鑑定の信憑性の議論もポイントでした。

また、今月1日に最高検察庁・警察庁が足利事件を検証する報告書を公表しましたhttp://mainichi.jp/select/jiken/news/20100402ddm041040007000c.html、http://www.asahi.com/national/update/0401/TKY201004010113.html。当該HPを探しましたが、今現在は掲載されていないので、新聞報道からのものを添付致します。

 無罪により名誉回復、選挙権復活とは言っても、この18年以上にも及ぶ間に失ったものは余りにも多く、まさに「不条理」です。司法はこの年月をどう償うのでしょうか。私はこの冤罪(えんざい)事件について、一貫して支援してきた方々の常識を越えるご努力と勇気に、心から敬意を表します。「INVICTUS:負けざる魂」そのものですね。今回特に際立ったのは、菅家さんの送り迎えをはじめ、この間支援者として支えてきた西巻糸子さんの存在です。

 先日もテレビニュースの特集で、一連の支援活動における彼女の献身的な姿を報道していましたが、「幼稚園バスの運転手をする人が、幼児を殺すはずはない」との、ごく当たり前の情念を拠り所に今日まで全面的に支援してきた様子を知り、あらためて人間としての原点を確認した思いです。昨今、理不尽なことばかりの世の中、人間の尊厳と信念に基づいて行動する勇気を思い出させてくれました。

 それに対して、「捜査の可視化」への検討のフットワークの悪さは何なのでしょう。千葉景子法相は「こういう事件を契機に、捜査の可視化(録音・録画)にも踏み出してきたし、法相としても再発防止のために法的、制度的検討をしなければならない」と閣議後の記者会見で述べたそうです、記事の見出しでは「捜査の可視化へ法相改めて意欲」とあります。中井国家公安委員長も菅家さんから研究会で意見を聴く意向を示したようです。

 ちょっと待って下さいよ。民主党はこれまで、国会に完全可視化を実現する法案をすでに2回上程したのではありませんか。この段に至って法相・国家公安委員長が「検討する」だの「意見を聴く」だの、寝ぼけたことを言うではありませんよ。何を躊躇しているのか、誰に遠慮しているのか、ことの重大さを全く理解していないし、完全可視化への情熱を感じません。以前には「2年間は研究する」とも語っていました、情けないの一言です。まさに「法治国家」ならぬ「放置国家」です。

 加藤周一はある対談で人間の知的活動について語っていました。「情報収集というのはいくら頭が良くてもダメなんで、目の前で子供を殺されたら、怒る能力がなければなりません。あるいは、何か一種の感情を生じないとダメです。ただ情報を集めただけじゃどうにもならない。『人間の尊厳を守る』と言ってもよいかもしれません」。

 このような事件は二度とあってはいけないのは当然として、西巻さんに見る支援の姿勢から多くの教訓を学ぶ思いです。

One Response to “西巻糸子さんのこと”

  1. 秋山孝二の部屋 » Blog Archive » こうして彼は「犯人」にされた Says:

    [...]  映画「それでもボクはやっていない:http://www.soreboku.jp/index.html」、「Shall we ダンス?」の周防正行監督、足利事件冤罪被害者の菅家利和さん(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=3796)、足利事件の弁護士の笹森学さんをお招きしてのシンポジウム「取り調べの全面可視化を考える」が、700名以上の参加者を集めて開催されました。 [...]