『長期的視点』の大切さ

Posted by 秋山孝二
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 この定期ニュースレター『厚生通信(https://www.jiji.co.jp/service/senmon/welfare/index.html』に昨年から『巻頭言』として掲載して頂いています、今回は年明け最初で通算5回目の文面、昨今考えていることをつらつらと書きました。

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「長期的視点」の大切さ

公益財団法人 秋山記念生命科学振興財団

理事長 秋山孝二

 昨年は、21世紀にこんなことが起きるのかと思わせる出来事が目白押しでした。そんな中、私は幾つかの場で、今こそ「長期的視点に立つ」ことの重要性をあらためて学びました。

 先ずは投資の世界、財団法人活動の神髄はどんな時代でも持続可能なこと、その原資となる収入は当然「長期的」に維持されることが必要条件です。基本財産の運用収入は「長期的視点」からの投資ポートフォリオで、それ故に為替リスクほか取れるリスクもあるはずです。

 次は政策論議、日本は「少子高齢社会」と言われてきましたが、実は「高齢化」よりも「少子化」の将来に与える影響を真剣に考えなければなりません。これまでの延長線上で課題解決を図ろうとすると、どうしても高齢者対処になりがちで、「長期的視点」に立てば人口ピラミッドの劇的変化による全ての社会システムの歪が露呈してきます。最優先課題は出生率の向上、子育て環境の改善、教育制度の改革等のはず、更に財源論議になると、近視眼的ゆえに後代負担(先送り)の論理がまかり通っている惨状です。

 そして、「長期的視点」の最も重要なのは人材育成・教育分野です。数年前に、私が東京都江戸川区の公立中学校理科教諭だった時の生徒たちから、40年ぶりの同期会開催連絡がありました。私の教師生活は僅か5年間、この期は理科の授業で3年間、私にとって2回目の卒業生でした。当時は、私なりに生徒たちと向き合って一生懸命だったと信じていたのですが、後に生徒たちにとって本当によい教師だったのか、甚だ確信が持てませんでした。私の若さと正義感ゆえに、一言が生徒たちの心の傷になってはいないか、そんな不安を抱えながら当日会場に足を運びました。懇談の場で、「今日あるのは先生のお陰です」、「先生の理科の授業で今の道に進んでいます」と複数の生徒たちが語ってくれて、私は感動と興奮を抑えきれず涙が溢れてきました。ただ同時に、「私の人生、いろいろありました」とつぶやく生徒もいて、これまでの人生40年間、山あり谷ありだったとも推測します。その日の帰り道、教育の評価はやはり長い年月を経てのものだと心から実感したのです。

 あらゆる分野での基軸は、「長期的視点」に立つことなのではと、年をあらためて思います。

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