ヒグマから北海道を見直しました!

Posted by 秋山孝二
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 北海道市民環境ネットワーク(通称・きたネット: http://www.kitanet.org/index.html)と、一般財団法人セブンイレブン記念財団(http://www.7midori.org/)との共催「北海道環境活動交流フォーラム」が、昨年に引き続き(http://www.kitanet.org/event/index.htm#work2009)、札幌円山動物園(http://www.city.sapporo.jp/zoo/index.html)で開催されました(http://www.kitanet.org/event/index.htm#work2010)。

幅広いパネリストで大盛況

午後のプログラム:幅広いパネリストで大盛況

  今年は、国際生物多様性年スペシャル『北海道の生物多様性を考える』、「ヒグマのいまを知る、豊かな自然の道しるべとして」と題して、多面的な視座からの意見交換でした。このところ本州で、ツキノワグマが人を襲う被害(?)が大々的の報道されていますが、生物多様性の視点からは、かなり違った現実と受け止めるべきではないでしょうか。クマと人との距離感を間違った人間の暮らしとでも言えるのかもしれません、メディアにそんな見識を求めたいですね。

 クマとの付き合いかたは、アラスカでの活動を基に作成された手引き翻訳版としての 「クマとの調和したくらし:http://www.oshima.pref.hokkaido.jp/os-ksktu/kuma/LivingInHarmonyWithBears_J1%201p-16p.pdf」が、大変参考になります。

 分科会の一つでは、昨年に引き続きエゾシカ問題も新しい切り口で議論されたようです。私は後半部分しか参加できませんでしたが、ただ「対策」に追われるのではなく、エゾシカがなぜこんなに増えてしまったのか、の検証もして欲しかったですね。生態系の頂点「オオカミ」の絶滅が直接的な理由であるとか、どこかでエゾシカ・ヒグマ・オオカミ等、「生態系」をめぐる多様な議論も今後期待したいです。

ガールズ・パワーで、エゾシカ問題をかみくだく!

分科会:ガールズ・パワーで、エゾシカ問題をかみくだく!

 ヒグマは、ツキノワグマより世界的にははるかに広い生息分布で、しかも北海道はその南限として、大変コンパクトなエリアに多数のヒグマが存在する、言い換えればヒグマが広く動き回らなくても生息できる「豊かな多様性・生産性のある生態系」を育む貴重な大地であることを知りました。

 もう15年以上前になりますが、私はアラスカ・キーナイ半島(http://www.silverfinguides.com/japanese/)に「キングサーモンほかの釣り」に行きました。ある一日は小型水上飛行機で離れた湖に着水し、そこに流れ入る小川の河口付近で7時間程の紅シャケ釣りでした。機内でパイロットが、「一つだけお願い、もし釣ったシャケをクマと争ったら、クマに譲ってやって下さい!」と言ったので、私も含めて大笑いをして「面白いジョークをいうパイロットだね」と、湖面から離陸して7時間後に迎えに来る飛行機の姿を見送ったのです。

 ところがですよ、釣りを始めて30分もしない内に、何と何と山からいろんな種類のクマが続々(!)と私たちの方に降りて来るではありませんか。一堂、足は震え胃は痛み、ある人はツルっと滑って全身ずぶ濡れ、記念にカメラを回していた人のビデオを後日見ると、画面が震えで揺れているのが分かります。「大変なことになったな」と、私は動揺しました、もう釣りどころではありませんでした。ガイドの腰にはライフルの弾が6発用意されていましたが、到底そんな数では足りません。実は後でアメリカ人に聞くと、それは釣り人を守るというよりも、事故が起きて紛争になった時のアリバイ(体制は整えていた?)だとおっしゃる方もいたりして・・・・。総数〆て20頭以上はやって来たでしょうか、「お邪魔しました」の世界でしたね。

 結局は、勿論何の事故も無く、予定通り釣りを続けて戻りましたが、多くのクマたちが本当に至近距離を、まるで私たちの存在を無視するように自然体で通り過ぎていくその姿に驚きを感じました。先日フォーラムの講演を聴いていて、アラスカでそのような「人との共生の環境」を創り出す永年の活動を知り、あらためてこれまでの努力の賜物なのだと理解しました。

 札幌・北海道は、ヒグマと「共存する知恵」を身につける、世界に類を見ない貴重な場だと強く思いました。ただ「射殺」を繰り返すだけでは、あまりに知恵が足りません。北海道におけるヒグマとヒトとの関係は、イコール「人間と野生との関係」が試されている、そんな気がしてきます。