財団法人 北海道文化財団(http://haf.jp/)主催の「アートゼミ」が開催され、今回は特別講座として「いのちと心を支えるアートの役割~長期災害救援の視点から」と題して、関西学院大学・野田正彰教授の基調講演、後半は北海道大学・定池祐季助教、北海道文化財団・磯田憲一理事長も加わっての意見交換でした。当日会場は、日頃から芸術・文化分野で活躍する方々100名以上がお集まりになり、野田先生の鋭いご指摘・認識を真摯に受け止めていました。
|
|||
○ 趣旨 平成23年3月11日(金)に発生した東日本大震災の発生を受け、長期的な災害救援の視点から、特に被災地の子ども達が立ち向かう社会的な場面に応じた、さまざまな「いのちと心」のケアの場面において、「被災地が今どのような現状なのか」、「モノ以外の目に見えないことに対して、被災者の心に必要なことに対してどのように接していくのか」、「その中でアートの果たす役割を知ってもらう」ことを目的に、この特別講座を開催します。 ついては、道内における、アートNPOやアーティスト、地域の文化施設・事業に関わる多くの方々に、『アートの役割~文化芸術活動』による支え方、被災者への接し方、生活場面でのコミュニケーションづくりなどについて、「講師の講演と意見交換」から知っていただき、今後の支援の心構えを広げていくきっかけづくりとしていただきたいと思っています。○ 内容 ・災害救援からみた「阪神・淡路大震災」などと「東日本大震災」との差異 ・物理的な被害以外の「目に見えない」間接的な被害への影響 ・「社会的悲哀」を大切にする今後の救援の方向性 ・アートNPOの活動や文化芸術活動の社会的役割 など□ 主催等 ・主催;(財)北海道文化財団 ・協力;札幌市教育文化会館(札幌市芸術文化財団) ・後援;北海道、北海道教育委員会、札幌市、札幌市教育委員会□ 日 時 平成23年6月30日(木) 18:00~20:00□ 会 場 札幌市教育文化会館 4F講堂 http://www.kyobun.org/ □ 定 員 156席(定員になり次第、締切とさせていただきます。)
□ 参加者 *特に制限はありません。どなたでも自由に参加できます。
□ 事業内容
・講師;関西学院大学 野田正彰教授 内容(第1部)野田正彰教授による基調講演 (第2部)野田正彰教授と磯田憲一理事長による意見交換
|
野田正彰(http://www.amazon.co.jp/%E9%87%8E%E7%94%B0-%E6%AD%A3%E5%BD%B0/e/B001I7NB14)さんは、これまでたくさんの著書を出していますが、私は「喪の途上にて:http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/3/0022870.html」が印象に残っています。
4月に行われたこちらの講演も参考になります(http://sankei.jp.msn.com/life/news/110527/trd11052707310003-n1.htm)。以下、先日の札幌講演からいくつかを書き留めます。
* 「映像災害」とも言える3・11以降のマスメディア
:被災地からのいち早い逃亡、東電・保安院発表に依拠するのみ、現実を見ない報道
:「がんばろう、日本!」、「こころは一つ」?「ひとりではない!」等のフレーズは、「悲しみの抑圧」でしかない
* 日本の近代社会は残酷な歴史の繰り返し:傷ついた人々に「ガンバロウ!」と言ってきた、「悲しみを抑圧してきた」社会~悲しみを悲しみとしてではなく、早く忘れて前へ進めと
* 少し時間が経っての避難所は、格差社会を実感:この段階での「支援」があるはず
* 「異常な事態」における「正常」な反応を、「病的」と言ってはいけない:人間には時間を経て、選びとって生きていける力がある
* 家族を失った人たちは、ショックの後に遺体を探す行動をとる。自分は何もしてあげられなかった等、故人との対話のプロセスと理解すべきであり、時間を経る中で故人の遺志を聴き、立ち直っていくプロセスである
* 震災と芸術:どう役に立つ等ではないはず:安易に「希望」などとは言って欲しくない、被災者と共に語り合うこと、「表現せざるを得ない人々の叫び」が芸術ではないか
* 柔らかい創造力が大切:被災者に共感すること、それは直接語ることを通してつながっていける
* 震災から学ぶ姿勢が重要:「助ける人」と「被災した人」という図式ではなく
* 以上のことから、芸術家の役目は、人が能動性を取り戻すプロセス、すなわち問題を直視して、抑圧しているものを表現することではないか
* 自分で課題を発見して行動する:ボランティアも同様だが、行政の指示の下で活動するのでは「勤労動員」である!
大震災後の社会変化を、鋭敏に表現するものは何か、彼はそれを芸術に期待していました。歴史を振り返ってみて、関東大震災の後、エログロが流行して、治安維持法が制定され昭和の軍国主義時代へと突入、阪神淡路大震災後は、「心のケア」、「癒やし系」が流行し、厳罰化、テロ対策の日常化、派遣労働者の増加と変わっていった近い過去。「弱者の視点、今度こそ」、彼からのメッセージだったと思います。
7 月 9th, 2011 at 10:02 AM
[...] 先月30日の野田正彰さんの講演会(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=9201)で、一つだけ違和感のあったお言葉が、「北海道の人間は今回の災害に対してどんな支援活動をしてきているのか、殆ど現地で出会わなかった。遠い場所での出来事と考えているのでは」、でした。とんでもありません、少なくとも私の周辺で知っているだけでも、行政・NPO・医療機関・企業等、たくさんの方々がすぐに駆けつけましたし、今も継続して活動しています。限られた地域での野田さんの体験だけから断定するのは間違いだと思いますが。 [...]