このところの二回の「ジャニーズ記者会見」を、全て観てたわけではありませんが、直後のメディア等での論評、更に少し時間を経てのSNSでのコメントを読んで、私なりの思いも書き留めます。
先ずは、今回の二回目の記者会見、冒頭から私は上場会社の「株主総会」のノリを感じたのです。一回目はどこかある意味で率直で成り行き任せで、「おひとり一問で」という進行役の予めの注意にもかかわらず複数質問してもあまり神経質にならず、逆に自然なやり取りと受け止めました。先日の二回目は、一回目の疲労感を踏まえてか、主催者側は明らかに前回の反省をもとにその分野の専門チームの意見を取り入れて、「2時間で」という時間制限を明確にして、質問者に当てる様子も事前にかなり吟味した感がありました。それゆえに参加して質問する側もその窮屈感があってかマスメディアが終了後に報じた「紛糾」(私はそうは思いませんが)となったのかと思うのです、まさに荒れた上場会社の株主総会の態を成していたような。
私は、上場会社の株主総会を経営側として経験してきましたが、そもそも「株主総会」は定款に基づいて議案を決議しなければならないという種類の場、何だかんだ言っても議長に進行の責任と権限があり、最後は多少強引でも参加者・委任状で「承認」を取り付ける展開で終了ですよね。時々は質問ではなく「定期的情報発信をお願いします!」みたいなご意見を頂いたこともあります。要するに終了の形が決まっているのです。
今回の場は「記者会見」、それも「新製品発表」と言ったような晴れの場ではなく、ジャニー喜多川氏による性加害問題を受けた記者会見で、謝罪から始まる「不祥事(今回の場合は適切な言葉ではないかもしれません)」です。その辺の状況認識が主催者側には大いに不足していたと思うのです。時間制限はあったとしても、前回よりも短時間というのはあり得ないですし、極端に言えば登壇者の疲労感が伺えるくらいの覚悟が必要だったと思うのです、皮肉ではなくお二人は多くの番組で役者としてご活躍ですから。
また、報道によると(毎日新聞より)~~~~~
ジャニーズアイランドの社長である井ノ原快彦氏は「一言いいですか」と話し始め、「全国に生放送で伝わっている。自分にも子どもがいるが、ジャニーズJr.や、それこそ被害者の皆さんが、自分たちのことでこんなにもめているのかと見せたくない。どうか、どうか落ち着いてお願いします」と訴えた。
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とありますが、私は前回は彼の姿・発言には好意的に感じていましたが、今回の彼の発言には違和感がありました、この発言こそまさに主催者側の現状認識の誤りだと思うのです。記者とのやり取り、あの状況を「こんなにもめているのかと見せたくない」と受け止めていること自体がこの場の目的をはき違えていると。この場では議長はいませんので、進行役が泥をかぶることを覚悟でマイクを回すとかする、或いは予めの約束とは違ったとしても真摯に答えるとかが必要な場なのではありませんか。興奮したファンを前にしての場ではないのですから、徹底的に記者たちに答え続ける、ある意味の根競べみたいな「対決」の姿を通して、謝罪と補償と再出発の決意を示す必要があったし、アドバイスする必要があったと思います。恐らく弁護士グループの助言なのだと思いますね、弁護士的な視点からは紋切型的終了になりがちですから。
同時に私は参加されたメディア関係者の方々にも猛省を促したい点があります、メディア関係者の傲慢さを今回の会見で感じたからです。記者会見は取材の場、自らをアピールするパフォーマンスの場ではなく、同時に複数のジャーナリストを集めて情報を得る機会ですよね、であればある意味で時間制限があるのは当たり前、もちろん十分な時間という意味ですが。仮に進行役から当てられなかった場合は、後日文書で公にする質問に返答することを約束させるような提案をするとか、今後の定期的記者会見・積極的情報発信を約束するとか、ご自身の質問に対して確かな返答を担保する何がしかの知恵が必要なのではないでしょうか。旧統一教会の取材を永く続けている鈴木エイトさんは、記者会見に参加したものの「前回(9月7日)とは異なり質疑応答は途中で終わり、最後まで当ててもらえなかった」と報告し、用意していた質問をSNSに投稿していました。これまで数多くの妨害ににもかかわらず取材を今も続けているしたたかさと真摯なジャーナリストとして姿勢を感じました。
もう一つ、東山社長に関してのメディア等の批判に対しても強い違和感と憤りを感じます。「経営の専門家ではない彼にこの任が適切なのか、大丈夫か、できるのか」みたいな発言を複数目にしていますが、私は今のこの状況の中、彼が「火中の栗」を拾って自らの人生を掛けて引き受ける姿に対しては、覚悟を感じるし他に誰もやることは難しいと思うのです。今の日本、何か引き受ける人間、事を始める存在に「お前できるのか」とか「リスクはないのか」みたいな何の意味もないしたり顔の輩の群れ、これが今の日本の凋落の一因でしょう。そして、その発言がメディア関係者の場合は、それこそ「これまでお前たちはジャニー喜多川氏への批判を全く隠蔽してきたではないか、勇気もない、恥を知れ!」と猛省を促したい気持ちです。
記者会見が取材の場だとすれば、これを踏まえてそれぞれの企業・個人のメディアがどう報道し、取材を続けるのか引き続き注目していきたいと思います。