今年も、韓国から劇団が札幌にやって来ました。3年前から始まった複数の交流事業として、今年は釜山と光州からでした。これまでの交流については、数回この欄で書いています(http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=97、 http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=148)。
今回の二つ、一つはパムンサ(海と文化を愛する人々)の「その島での生存方式」、もう一つは光州演劇協会の「タシラギー再生ー」です。
韓国若手演出家キム・ジヨンの韓国現代劇作品「その島での生存方式」は、最初は釜山を連想する海辺ののどかな芝居かと思いきや、目の前の社会課題とグローバル経済に対する鋭いメッセージの提起でした。音の掛りの人、役者一人一人が、観客へのエンターテイメントを意識して、個性的でしっかりした演技が印象的で,一昨年来の韓国劇団の特徴なのかも知れません。交流会で間近に見て、「演劇・パフォーマンスの実験集団」と言うだけあって、体型も大きくがっちりしていましたね。
一方の「タシラギ―再生ー」は、演劇というよりも「伝統芸能」を観る感じでした。「タシラギ」と言う言葉は、「再び生まれ変わる」という意味の珍島に伝わる葬礼風習だそうです。死別の悲しみを、笑いと興趣に変えて、現世への早い帰還を望む先祖たちの知恵といえ、葬儀の場でありながら、笑いを誘う場面の数々、新鮮な葬儀文化を垣間見た思いです。姿・形は殆ど変わらないのに、「何か違うな」という思いの向こうに、固有の芸術文化を認識します。
例えばこれまで観た韓国演劇では、トイレ(かわや)の場面がよく出てきます。聞いたところによると「庶民」の間ではかなりオープンで日常的な話題とか。舞台上での意味合いは、「仲間うち」、「地元に馴染む」、そんな表現なのかな、と勝手に解釈しています。
昨年の光州では、一つの日本の芝居をそれぞれ韓国の役者バージョンと日本の役者バージョンとで2回上演したそうです。全く別の芝居のようで、観客の反応もかなり違ったとか。また、同じく昨年、札幌では一つの芝居を両方の役者が混在で上演して好評でした。舞台での様々な意欲的・実験的試みもあり、また交流会での質疑応答も実に興味深いですね。北海道の演劇に関わる皆さまのチャレンジに拍手です。