日本大学アメリカンフットボール部寮での大麻事件に関して、私は時間もあったので、先日行われた記者会見を中継で観ていました。記者会見自体に興味があったのと、この会見を受けてメディアがどう報じるのかにも注目していたからです。というのも、この所のいわゆる事件・事故を巡る会見、「ジャニー喜多川氏性加害」、「宝塚歌劇団員の自死」、そして「日大アメフト部員大麻使用」と、連続しての記者会見の違いにも注目していたもので。企業経営者として、多くの会見を経験した自分として、この一連の中継・報道にはとても他人事とは思えない印象を抱いていました。また、日大に関しては前回の違法タックル事件の時に私なりのコメントも書いていました。
* http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=33275
このメッセージの中で引用している「部員一同」の文面の最後部分が今も心に残っているのですが・・・。
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私たち選手一同の今の思いは以上のとおりです。私たちは、今回の件の深い反省のもと、真剣に、謙虚に、一丸となってチーム改革を実行していく所存ですので、どうかご指導のほど、よろしくお願い致します。
平成30年5月29日
日本大学アメリカンフットボール部選手一同
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これ程の決意を表明していながら、まだそれ程時を経ていない時期に今回の大麻事件、私は学生諸君はもとより、部の監督・コーチ陣の体たらくに腹が立っています。
一方、この2時間の予定をはるかに越えて、2時間44分に及ぶ会見を受けての各メディアの報道も相変わらずの似たり寄ったりの陳腐な記事ばかり、林理事長批判と同席した久保利英明弁護士のスーツ・ネクタイの奇抜さを指摘するなど、見るも哀れな皮相的な内容に日本のメディア関係者の見識のなさに呆れるばかりでした。
そんな中、会見でも質問をされていてキラリと光ったスポーツライターの小林信也さんの記事は、私と似た視座からの指摘で大いに賛同しました。詳細は以下のサイトからお読み頂ければ。
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スポーツライター 小林信也さん
デイリー新潮編集部12月8日(金)
タイトルは:
日大「林真理子理事長」の会見は「中身なし」ではなかった…新聞テレビが報じない「競技スポーツ部に宣戦布告」の覚悟
https://news.yahoo.co.jp/articles/b0c04fb9b83744d92d11e64482174be9a5bdf43c
小林信也さんがおっしゃる通り、集まった記者たちの関心は、「林理事長の責任問題」と「アメフト部を廃部するのかどうか」に集まっていましたね。私は大学関係者でもない記者たちが、大学経営の根幹に関わる人事に批判を繰り返すのは大いなる筋違い、そもそも人事において学長・副学長の「退任勧告」と理事長の「減俸50%」が不公平という認識自体が間違いであり、組織の賞罰のイロハも知らない騒ぎ屋レベルの認識です。メディア・記者側のこのような理解ゆえに、記者会見で語られた重要な事柄が伝わらず、「中身のない会見だった」といった報道が大勢を占めたのは、まさにこれまでの多数のマスメディアの貧困であり、自称フリージャーナリストを名乗る贋物を自ら露呈していたと思います。
同席した益子俊志委員長は、大学スポーツのあり方に関してかなり大胆な改革案を提示。「学業優先の部活動への転換」、「スポーツ推薦入試制度の見直し」、「部員の学業成績の基準を設ける」など、従来は「競技成績が良ければ許される」傾向のあった部活体質の見直しに方向性を示していました。大学は日本一、世界一のスポーツ選手を輩出する強化機関でなく、学業を通して人材を育成し、そのための効果的活動の一つとしてスポーツを奨励する教育機関であるとのご発言も斬新だったと私は思いますが、このような報道をしたメディアは小林信也さん以外は殆ど無かったのではありませんか。教育機関たる大学という認識があれば、今回のような事件を起こした学生たちを責任をもって正しい道に導くことをお約束します、くらいのご発言があっても良かったではと思うのですが。
こんな中で、私がハッとさせられた二つを書き留めたいと思います。一つは久保利英明弁護士の記者への返答。寮への大学の管理強化を促した記者の質問に対して、「本来は大学というのは学生・職員による自治が基本、日本大学でも以前、学生の秋田明大氏を筆頭に大学運営に対しての大規模な改革のうねりがあったけれども上手くいかなかった歴史もあります。」、と秋田明大の具体的な名前を挙げてのご発言でした。私はこの弁護士は只者ではないなとその時に感じましたが、その後の報道の中にこのフレーズを記事にした記者は一人もいなかったと思います。再度、前回の私の違法タックル事件へのコメントの中でも日大闘争の事を書いていたので再掲します。
* http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=33275
もう一つは、日大新聞の方のご質問、学生の立場から理事長はじめ大学運営の幹部への鋭い指摘は、ひと際心に残るものでした。翌日のテレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』でもこの問題を取り上げていましたが、肝心のこの日大新聞の方へのコメントはCMを挟んで途中で終わってしまいました、何か力が働いたのかもしれませんね、残念です。
総じて現在の日本のジャーナリズムの見識の無さ、ただただ騒ぎ立てるだけを競っているような低レベルの実態こそ、日本のメディアリテラシーの低さを象徴しているような気がします。日本の劣化、いや、もともと低レベルだったのでしょうね、暗澹たる気持ちです。