先月の「G7伊勢志摩サミット」は、日本では2008年7月の「G8洞爺湖サミット」以来のホスト国としての開催でした。マスメディア的には、直後の米国オバマ大統領の広島訪問に注目が集まったようですが、8年前の洞爺湖サミットでNGOの市民フォーラムの一人として参画した私から見ると、今回のサミットで政治の劣化・稚拙さを痛感しました。
東洋経済ほか、各メディアに掲載されているように、安倍首相の総括ほか、現状認識を大きく歪めて、サミットの場を選挙を控えた国内政局づくりに落とし込めた政府の大罪は許し難いものがありますし、世界に恥をさらした気がします。
首脳会談で安倍首相が「リーマン・ショック前夜」の根拠として提示した資料は、世界経済の需要動向を示す「コモディティ価格の推移」「新興国の経済指標」「新興国への資金流入」「2016年成長率の予測推移」の4点で構成されていましたが、そのどれもが根拠としてはあまりに幼稚であり、認識の誤りが明白です。IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、翌日にすかさず「世界経済は2008年のような危機にはない」と安倍首相の意見をまっこうから否定しました。
* 東洋経済から <http://toyokeizai.net/articles/-/120248>
* 「リーマンショック前夜」を裏付けれ資料を作ったのは誰か~未遂に終わったサミットを国内政争の道具にする計画
<https://www.youtube.com/watch?v=jRi_FShnklI>
更にしばらく経って、「リーマンショック前夜」発言自体を無かったことにする見え透いた修正を行っているのです。国内ではこれまでゴリ押しした発言修正等は、さすがに国際政治の場では通用するはずもありません。外国メディアは厳しい指摘をしていました。
2008年洞爺湖サミットは自体は、洞爺湖及び国際メディアセンター(IMC)がある留寿都がメインでしたが、事前のアウトリーチ20か国会合は札幌市内で開催されたので、世界の首脳が札幌のホテルを貸し切る形も多く、、警備も含めて1972年冬期オリンピック以来の国際色豊かな数日間でした。中国の胡錦濤首席一行の車列が、私たちの目の前で創成川沿いの道を疾走する風景は今も忘れられません。2008年では、NGOも活発で、時を同じく札幌市内で世界からNGO関係3000人が集合し、様々な議論を展開しました。終了後の私なりの総括はこの欄にも当時、以下の通り掲載しました。
< http://blog.akiyama-foundation.org/weblog/?p=54 >
また、開催前には、NGO代表の皆さんと北海道代表として当時の福田首相ほかと意見交換するために首相官邸を訪問し、2時間近く真摯に課題・解決策等を議論しました。
NGOフォーラム最終日には、集まったすべてのNGOから「札幌宣言~世界の貧困をなくすための市民の声(Sapporo Declaration: Global Voices to End Poverty )~」も提起されました。間近にそのプロセスを見て、私は大変勉強になり、以後の活動に役に立ちました。
<札幌宣言(http://jnne.org/img/G8documents/Sapporo-anouncement-Final.pdf)>
NGO幹部を乗せて私が運転する車で、留寿都にある国際メディアセンター(IMC)にも行きました。2000人を越える世界のメディア関係者及びNGOの方々100人位が滞在していると聞きましたが、中ではそれ程の人たちを感じる場面は無く、また、サミットでG8の首脳たちと直接取材できるのは数十人と限定されているではありませんか。それ以外の記者たちは、数日間、ただひたすらこのIMCで無料飲み放題・食べ放題の環境で記事を発信していることを知り、サミット自体のセレモニー化を実感しましたね。滞在者の中には、「前年のドイツよりも料理も飲み物も素晴らしいね」、「すっかり太ってしまうよ」と恥ずかし気もなく言っている者もおり、「貧困」、「飢餓」と言ったテーマ等に心を寄せる雰囲気もない、そんな現実に複雑な思いでした。
あれから8年経って、当時も酷い政治と感じていましたが、今年のサミットの日本政府の発するメッセージを読んで、益々坂を落ちる現状に危機感を抱きます。と同時に、嘆いている暇もないので、自分の出来るフィールドで何とか少しでも夢を持てる社会づくりにまい進したい意欲も強くなりますね。