マスメディアは、今日・明日のニュースで忙殺されていて、私たちはなかなか「現代」とか「今の社会」を深掘りするメッセージに出会うことが難しい時代です。
今年早々から明らかになった「台湾の鴻海精密工業(鴻海)とシャープの買収契約」のニュース、4月に調印に漕ぎ着けましたが、株式上場、資本業務提携、M&Aをやった私なりに感ずる所がありましたので書き留めます。
* http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20160402_751368.html
報道で知る経過から、シャープのトップの「覚悟」が良く見えませんでしたね。メディアは正確な情報提供もあればかなり情緒的なものまで、この種の大きな企業合同では相変わらずの大騒ぎ。シャープの株主、従業員、ビジネスパートナー等は、それらのある種の「雑音」に、この間翻弄されたのではないでしょうか。トップは、いつもにも増して先頭に立って伝えられる限りのメッセージを伝えるべきであり、相手企業のトップとも頻繁に水面下で意思疎通を図る必要があったと思います。何か、この一大事業に対する悪い意味での「サラリーマン社長」的軽さを感じたのは私一人ではないと思うのです。今回の企業売却の目的を繰り返し繰り返し世に語る、そんな一途な努力が必要だったのではないでしょうか、日本を代表する企業であるだけに。
もう一つ、今回の件で、日本の意思決定プロセスの課題も痛感しました、ガラパゴス化する日本社会のまさに「致命的欠陥」とも言える「スピードの無さ」です。先日、インターネットで「シャープはなぜアジ企業に屈したか?『仕事後進国』日本の敗因」とかなりセンセーショナルな題名で以下の記事が掲載されていました。一連のシャープのM&Aの経過を垣間見て、私はほぼ著者と同じような印象を、日本のビジネス意思決定プロセスに感じていましたので、紹介させて下さい。
この所、最先端の研究者ほか、世界を相手に日々戦っている方々と意見交換する機会があり、必ず話題になるのが「国際社会における日本の退潮」です。今、ダメという以上に、これからの将来においても、今のような日本社会の状況では当分期待できず暗澹たる気持になるという危機感です。国内マターで疲弊する日本の各セクター、毎日の不祥事、事件、事故の類に接していると、若い世代の育つ環境としての質的劣化を感じます。グローバルにコラボレーションしようとすると必ず痛感する課題なのではないでしょうか。
私の世代が残りの人生でできることには限りはありますが、少しでも伸びやかに育ち、世界で活躍する人材育成に尽力したいと再度思う昨今です。