先日東京で、 「公益法人制度改革と市民社会の新たな展望
ー新公益法人制度施行と特定非営利活動促進法10周年を迎えてー」
http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/topics/images/sympo_pamph.pdf
と題してのシンポジウムが、(財)公益法人協会http://www.kohokyo.or.jp/主催で、300名を越える出席者を集めて開催されました。
2008年12月1日からは、民法第34条が110年ぶりに改定されて、新しい三法による公益法人制度が施行されます。またこの日は、特定非営利活動促進法施行10周年にもあたり、二重の意味で新しい時代のスタートとなります。シンポジウムは本当に素晴らしい講師の方々のご登壇と、集中した300名の参加者の熱気で時には過激な言葉も飛び出したりで、皆さんが当事者としての迫力もあり、大盛況でした。日本にも、本格的な民による公益活動の展開が期待されるのでしょう。
3年前になりますが、「民が担う公共」について、私は(財)公益法人協会の会報(2005.11.10)巻頭言に下記のように書きました。
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「北のいのちとともに――民間の公的こころざし」
財団法人 秋山記念生命科学振興財団 理事長 秋山孝二
7月の御殿場でのセミナーは、この間の「公益法人改革」の議論を臨場感に満ちて聴くことが出来た貴重なひと時であり、とりわけ「寄付金」を巡っての税制改革の方向性は、今回大きな一歩を踏み出した感があった。
9年前に当財団の初代理事長が逝去した直後、生前、役員に就任していた10数箇所の諸団体・大学等へお礼の意味合いもあり、私はささやかな寄付を行った。ある地元美術館からは「感謝状をお渡ししたいので、総会時に受け取りに来て頂きたい」とのご連絡だったが、私はどうしても都合が付かず欠席し、代理の者をやむなく出席させた。また郵送で幾つかの団体からも「感謝状」が相次いで送られて来た。そんな中、アメリカ・ハーバード大学の研究所からは所長名の手紙が届き、「生前の秋山喜代さんの当研究所に対するご尽力に感謝して、今回の寄付金を原資として『Kiyo Akiyama Award』を創設し、毎年大学院留学生を対象に日本への渡航費用の一部に当てるべく計画中であるが、賛否をお尋ねしたい」旨の内容であった。勿論、感謝状に価値が無いとは言わないが、正直に申し上げて受け取った複数の感謝状の扱いには大いに苦労した。一方「一民間人のこころざし」の価値に対する表現として記念の賞を創設し、名前を刻んで永く後世に残すアイディアに、寄付する者への配慮・奥深さ・裾野の広さを感じた次第である。
19年前に当財団は、医薬品卸売業(株)秋山愛生舘の創業100周年を前にして、当時の四代目社長が私財を投じて北海道地域・民間・助成財団として誕生した。当時巷では「売名的」、「税金逃れ」等、出捐者の「高く強い志」を理解するどころか、むしろ的外れ・誤解による批判的な評論が多く、設立に携わった私には不本意であり、公的補助金頼みの財団が殊の外多い北海道での「財団法人」のイメージを知らされた思いだった。
一連の公益法人改革で、寄付金を巡ってこれまでの積み重ねた議論の成果として大きく前進した法案に改訂されたとしても、日本の中で「民間の公共を思うこころざし」を正しく理解・評価する雰囲気が醸し出されない限り、本当の意味の「寄付文化」が根ざす事は難しいのではないか。
とは言え19年間私達は研究助成を続け、昨年からはNPO等への社会貢献活動助成も開始した。どの様な環境の中でも、21世紀の「生命科学」を心から慈しむ民間の志に最高の価値を見出して、「北のいのちとともに」愚直に自主・自立・持続可能な活動を続ける気持には何の迷いも無い。
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先日のシンポでは、今回の三法についてかなり批判的意見も出はしましたが、何せ110年目の改革ですから、今後はこの間の理念をしっかり軸に据え、継続した議論を続けて改革の連鎖を創り出していく事が重要だと思います。私の企業経営者としての経験から言えば、「改革」はそう鮮やかに、瞬時に、劇的には参りません。勿論ある限られた時間幅との戦いではありますが、何回かの微修正と改革の連鎖により、迅速に新しい時代を創っていくのだと確信しています。そう言う意味では、これまで公益法人活動に関わってきた方々、これから担っていく方々の心意気が試されているに違いありません。あとは、それぞれの財団が、これまでの活動にプライドと自信を持って、新しい「民が担う公共」を押し拡げていくこと以外ないと思うのです。
以前から私は、学生とか若い世代の方々には、「『出る杭(くい)』ではなく『出過ぎた杭』に成れ!」とハッパをかけています。そして新しい時代は、辺境から蛮族によって創られる、そう信じています。