私は異業種交流会「北を語る会」の会員です。先日会報担当の方から連絡があり、今年7月のG8サミットを市民はどう考えるかについて、この間私なりに活動した視点から、下記のように報告をまとめてみました。また、それとは別に下記のサイトでも様子を知る事が出来ます。
http://kamuimintara.net/detail.php?rskey=143200809t01
「世界は、きっと、変えられる 」
G8サミット市民フォーラム北海道 共同代表
http://www.kitay-hokkaido.net/
(財)秋山記念生命科学振興財団 理事長 秋山孝二
http://www.akiyama-foundation.org/
2008年7月6日から3日間、札幌コンベンションセンター他で開催されたオルタナティブな「市民サミット」は、国内140のNGO会員からなる「2008年G8サミットNGOフォーラム」(星野昌子代表 以降 NGOフォーラム)http://www.g8ngoforum.org/forum/と、北海道の80のNGO会員からなる「G8サミット市民フォーラム北海道」(以降フォーラム北海道)の共催でした。「市民サミット」は札幌市の後援と、18の資金助成団体、43の協賛団体・企業からの支援を頂いて、40を越えるワークショップ・フォーラムの数々に、延べ2000人を越える参加者で盛況でした。 3日間の議論では、「気候変動」「生物多様性」「人権・平和」「貧困・開発」の大きな枠組みで、問題提起と意見交換が活発に為されました。
この「市民サミット」の意義は、ただG8サミット期間中に企画したという意味合いだけではありません。この市民フォーラムの一連の活動と有機的に結びついている所に更なる価値があります。 たとえばその一つとして、G8と日本政府、そして北海道庁に対して今年6月に政策提言を行いました。それは活動する市民たちがお互いの違いを尊重しながらも、市民の目から政策に反映させていくという、新たな時代の到来を期待させるものでした。
振り返ると、2007年9月21日に「フォーラム北海道」を設立して以来、もうお二人の代表世話人他皆さんとともに、大変密度の濃い活動をして参りました。設立時の挨拶の中でもお話しましたが、私自身は二つの意味合いから、今回の関わりでの自分の使命を感じていました。1)世代としての使命:20世紀半ばに生まれた者として、これからの若い世代が夢を持ち続けられる社会・自然環境への努力を惜しまないこと、2)北海道に育った者としての使命:行政・企業とは異なった、本来の「市民セクター」として、北海道においてプラットホームの構築、そして世界との直接的なネットワークづくりの実践です。市民活動的課題と企業的課題は相対立するのではなく、担い手こそ違うとは言え、その理念はかなり共通していると信じています。永く企業セクターに身を置いた私は、少しでもこの「市民活動への支援」に、メディアを含めた地元民間企業が興味を持つべく、出来る限りの努力をするつもりでこの任をお引き受けしました。
手始めの活動として、昨年10月29日に、内閣総理大臣、外務大臣、北海道知事宛に、「サミットに対する要望書」を提出しました。いわゆる「開催のあり方」に対する要望書です。具体的内容としては、1)市民に開かれたサミットの開催:政策提言の事前打合せ、CivilG8の開催、イベント・デモ等の市民活動への理解、市民メディアセンター設立への協力等、2)環境と人権に配慮したサミットの開催:会場周辺の環境保全、過剰警備・過剰交通規制反対、無駄な税金投入反対等、です。
次は今年1月に札幌市に提出した「公園使用に関する要請書」です。活動自粛を促すとも受け取れる市役所の姿勢に対して、普段と変わらない公的空間での活動を強く要請しました。
そして6月6日に、市民フォーラムは北海道知事へ「政策提言」を提出し、更に北海道的課題への意見交換の場を要望致しました。6月18日にはNGOフォーラムと共同で、首相官邸において「政策提言」を提出し、その後約1時間半に渡ってそれに基づいた意見交換を首相官邸会議室で行いました。私は市民フォーラムの代表として出席しましたが、30数名出席した政府関係者、海外・国内NGO関係者との緊張感のある意見交換は、大変貴重な経験でした。
2008年7月7日から3日間開催された「北海道洞爺湖サミット」。いつものように、北海道内ではそれに合わせてさまざまなイベントが繰り広げられました。北海道知事を会長とする「サミット道民会議」は、行政、経済団体などで構成され、サミット1年前の昨年6月に発足、「みんなでサミットを成功させよう」のスローガンのもと、3億円近い予算を立てて、その費用の大半は民間企業からの寄付でまかないました。それに対して私たちは、「おもてなしのこころ」と称して相変わらずの中央依存のこのようなお祭り騒ぎとは明確に立ち位置を異にして、コンパクトな予算の中、しっかり世界に向かって、北海道的課題を共有し発信していく強い決意を表明しました。
もろ手を挙げたサミット応援とは一線を画して開催されたのが、「市民サミット」や「オルタナティブ(既存のものとは別な・もう1つの)サミット」と呼ばれる市民参加の集いです。北海道では、環境、平和・人権、開発・貧困問題など多様な分野で活動している道内の団体・個人が一堂に集結し、その中心を担ったのが市民フォーラムでした。東京では昨年1月、NGOフォーラムが結成され、昨年6月初旬にドイツで開かれたハイリゲンダム・サミットに人を派遣し、現地で開催されたオルタナティブサミットに参加していました。近年のサミットでは市民活動団体からの働きかけが活発になり、諸団体が連携して声を上げ、途上国の債務や貧困問題などがサミットの議題に反映し始めています。NGOフォーラムはそんな世界的な動きの中で生まれました。
沢山の取り組みをご紹介したいのですが、紙面の都合も限られているので、幾つかだけを紹介致します。
一つは、市民ウイークスとして、補助金なしで成し遂げた「先住民族サミット」です。7月1日から4日まで二風谷・札幌で開催されて、海外・国内の多数の先住民族・市民の方々が参加し、最終日には「二風谷(にぶたに)宣言」と「日本政府への提言」が発表されました。「宣言」の序文は「イランカレプテ-アイヌ語で『あなたの心にそっと触れさせていただきます』」で始まり、内容は環境、食料、教育など多岐にわたりました。
次は、フォーラム北海道とNGOフォーラムが主催する市民サミットです。キャッチコピーは「世界は、きっと、変えられる」、英語で「We can change the world」。各国首脳が続々と来日した7月6日、オープニングシンポジウム「人々の声を世界に響かせる」が開かれました。冒頭にも書きましたが、3日間で40をえるワークショップを通して、湧き上がるG8サミットへの疑問、地域と世界の課題の共通性、行政とNGOとの新しい関係性等に関して、大変貴重な情報共有と共感を経験しました。たとえば、「夕張から考えるー債務と貸し手の責任を問う」の企画では、フィリピン・インドの方々から貴重な提起があり、別の企画でも北海道の自立と農業・エネルギーを巡るグローバルな課題との関連性を知ることが出来ました。この間主体的に関わった市民には、新たな気づきと連帯感により、確かな手ごたえを得たに違いありません。
最終日のクロージング・セッションでは、参加した中から次の14団体/個人によって、3日間を締め括るレビュースピーチが行われました。G8を問う連絡会(小倉利丸)、市民外交センター(上村英明)、先住民族サミット(木幡カムイサニヒ)、ゆうばり再生市民会議(熊谷桂子)、Japan Volunteer Center (熊岡路矢)、日本自然保護協会(道家哲平)、生物多様性フォーラム(山下洋)、SANSAD/インド(Anil Singh)、日生協保健部会(北嶋信雅)、Africa Jubilee South(Noel)、毎日新聞(横田愛)、Youth G8 Project(林雄太)、ezorock(草野竹史)、ACE(岩附由香)。
そして総括挨拶として、NGOフォーラム代表の星野昌子さんが、「政府に取り込まれることなく、緊張感と距離感を持ち続ける一方、大組織主体ではなく、多様なNGOの声に耳を傾け続ける姿勢を大切にしたい」と、含蓄のあるお言葉で締めくくられました。
別の活動として、どうしてもご紹介したいのが日本初とされる「市民メディアセンター」が札幌市内の3カ所に設置された事です。デモでの逮捕報道だけでなく、シンポジウムの内容の詳しい報道や、市民活動の記者会見などで大きな力を発揮したのが独立メディアや市民メディアと呼ばれる新しいジャーナリズムでした。動画・音声・活字をフルに活用し、近年のG8サミットやWTOなどの国際会議では、こうした草の根的なメディアの活動を支援するための組織が現地に設置されており、今回は「G8市民メディアセンター札幌実行委員会」が結成され、中心的活動を担いました。
この間主体的に関わった幅広い市民には、新たな気づきと連帯感により、確かな手ごたえを得た一連の活動だったに違いありません。そして単に思い出に留めるのではなく、今後のNGO活動へのステップとして役立てたいと今思っています。